特集の中で、私や編集部が無意識に書いていた台詞を見ると、「面子(メンツ)を大事にする男性上司には、ケンカを挑まず、褒めて育てるキモチで」とか、「意見を通したかったらまずラスボス男性と仲間になってから、自分の意見を伝えよう」とか、忖度だらけの“ノウハウ”を書いているではないか。

私は「おじさん忖度女性」を増やしていたかもしれない

 私を含むARIA世代(40-50代)は、立場が上がり「上層部に話を通す」機会も増えていく。縦組織の男社会が岩のように立ちはだかり、社内政治でのし上がってきた手ごわい男性上司や経営層の中で、少数派として生き延びなければならないために付けた知恵が、こんな小手先の「忖度ノウハウ」だった。可愛い妹たち(後輩女性)に、「こうやればうまくいくのよ、賢くね」と伝えてきたことは、グローバルの常識から見たらすこぶる時代遅れな「おじさん忖度女性」のやり方だったかもしれない。“男女不平等を自ら受け入れる女性”を増やしていたかもしれない。

 この報道を聞いて、同世代の女性たちと交わした感想は、「順位、また下がったんだ…でも日常生活では不自由ないから、そこが不思議だね」「あんまり男女平等って言いすぎると、めんどくさい女だと思われちゃうから工夫が必要だね」など、脱力するほどあっさりしたものだった。空気を読みながら入念に組織の和と己の心を保とうとする忖度ノウハウが身に付いた女性がたくさんいる。敢えてそんな場で大きく吠えることはみっともないと思う自分がいる。

 一方で帰宅後、私は中学1年生の娘に向かって静かに言った。「もうこんな国で教育を受け続ける必要はないかもよ、早く留学しな」。