ポイントは「何に合理性があるか」

 ジェンダーギャップ指数というのは、純粋に「男女格差」だけを測っている調査。国の発展レベルは考慮されていないのが特徴です。極端にいうと、高等教育の進学率が「男性90%・女性80%」という国より「男女ともに5%」という国のほうが上位にランクインされるということです。

 私が今年訪れたルワンダと南アフリカ共和国を見てみます。ルワンダは水道や電気のない地域がまだまだありますが、女性議員の割合がなんと6割で、本ランキングでは9位でした。南アフリカは若者の失業率が50%を超えており、殺人や強盗といった犯罪も深刻ですが、ジェンダーや人種などの人権活動がさかんで、ランキングでは17位でした。

 格差には、性別、人種、貧富などさまざまなものがあります。日本の生活水準の高さは、かつて男女の役割を明確に分けジェンダーロールが固定されていたことで、経済成長を遂げてきた側面もあるのではないかと思います。問題なのは、社会を取り巻く環境がこれだけ変わっているのに、ジェンダーに対する意識が変わっていないこと。いつまで大量生産型の時代のままでいるんだよって。

 日本でジェンダー平等が進まない要因は、ビジョンの共有ができていない点にあると思います。「何に合理性があるか」は時代が変化するとともに変わります。戦時中は、男性が戦場にいて女性が国内を守っていた。高度経済成長期は、男性が働きに出て女性が家庭を守っていた。国の成長のためには、ジェンダーロールを分けることに合理性があったんです。

社会は自然に変わらない。どう変えていきたいか

 でも、時代は変わりました。超高齢化社会で生産年齢人口は減少し、GDPは伸び悩むこのご時世。今は、男性も女性も外国人も障害者もみんなが働ける社会にすることに、日本を元気にしていくための合理性があるはず。

 その変化を拒み、いまだに女性の進出にアレルギー反応を示している人を見ると、「じゃあ、あなたは日本をどうしていきたいの?」って聞きたくなります。ジェンダー平等は、経済と社会の繁栄に大きな影響を及ぼします。旧来の社会構造だと立ち行かなくなってるから、みんなが力を合わせなきゃいけないのに。

 社会学者の上野千鶴子さんが、あるインタビューでこんなことを言っていました。「社会はこれからどうなっていきますか?と聞かれると腹が立つ。社会は天気のように自然には変わらない。あなたは社会をどう変えていきたいんですか、と聞き返します」と。

 すべてはバイアスありありな現状を認めることから始まります。そして、バイアスを無くしていくために自分に何ができるかを考えること。私は書き手として、ジェンダー平等を推進することで、社会や経済にどんないいことがあるのかをもっと示していかねばならんなと思いました。

文/ニシブマリエ 写真/今城秀和