世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位と後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ諸国の下位に位置する日本。各界のリーダーたちに意見を聞いた。

 お台場のナイトプール「お台場ウォーターパーク」やタピオカミルクティー専門店「Tapista」などのブランディング、女性の健康と生き方を発信するメディア「Ladyknows」などを手掛け、はたまた報道番組「news zero」で水曜パートナーも務めるクリエーティブディレクター・辻愛沙子さん。男女平等や女性のエンパワメントをメッセージに込めたクリエーティブも多く手掛けています。そんな辻さんは、「ジェンダー・ギャップ指数、日本は過去最低」というニュースを目にしたとき、どんなことを感じたのでしょうか。メッセージを寄せてもらいました。

辻愛沙子 arca CEO / Creative Director
辻愛沙子 arca CEO / Creative Director
社会派クリエーティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観にこだわる作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ミュージックビデオ、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエーティブディレクションを手がける。この春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。10月に実施したLadyknows Fes 2019では、500円で受診できるワンコイン婦人科健診を実施し話題に。2019年11月より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演。作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

「感覚」だけではだめ、課題解決のための仕組みが必要

 当日の朝、Twitterでジェンダー・ギャップ指数に関しての速報記事を見かけ、そこからハフポストやForbesの分析記事を読みました。日本の順位が下がった、と見出しにあり、「ああ、やはりまた落ちてしまったか」と半ば納得感のある絶望がありました。

 ひと口に「落ちた」といっても、純粋に「環境が悪化して」というだけでなく、この時代の流れの中で改善に向けて他の国は努力してきたのに対し、日本は「何もしなかった」からこその順位の低下でもあるのだろうなと。アクションを起こさないというのは関心もないということ。

 2019年は、#MeTooの伊藤詩織さんや #KuTooの石川優実さんが声高に訴えて戦っていたことが大きく話題を呼んだり、ジェンダーや生理にまつわる企業主導の啓蒙プロジェクトが増えてきたり、活動や発信をしている人が増えてきている感覚もありました。同時に悲しきかな、日々のニュースで女児誘拐事件が報道されて議論が巻き起こり、想像力の足りないコンテンツや広告が炎上し、いろいろな意見が飛び交った感覚がありました。

 私自身、個人としての日々の発信もそうですし、仕事の中でもジェンダーイクオリティーについて声を上げて啓蒙につながる企画を必死で世の中に出してきた1年でした。作ったものの世の中に出ていない企画もたくさんあります。日ごろからこういった発信をしていると、報道された事件や仕事での企画の考え方、企業としてのスタンス、会議や飲み会の会話の中で出てきたさりげない一言まで、ことあるごとに友人や家族、社内のメンバー、クライアント企業などと、ジェンダーに関しての会話や議論が頻繁に起こるようになり、少しずつ、少しずつですが、周囲の意識が変わってきたように感じていました。

 個人の力は微々たるものかもしれませんが、周囲の意識が変わってきている感覚があったからこそ、この事実に対し、一向に変わっていない社会の現実をたたきつけられたようで、非常に無力感を抱いています。そしてやはり、啓蒙や発信を入り口にしながらも、その先にある法整備や規制改定、具体的な課題解決につながる仕組み作りを行っていかなければならないと改めて認識しました。