年齢や国籍による不均衡や偏見もなくしたい

 一方で、「女性」という属性だけでなく、「若さ」に対しても、偏見を感じる場面が多々あります。「女性」に「若さ」が加わると、より一層強い社会の加害意識や偏見を私自身も痛感します。年齢からくる不均衡もまた変えていきたいと強く思っています。

 討論番組でビジネスを語るにも、名前でなく「あの若い女」と視聴者に呼ばれることだって一度や二度ではありません。ひどいときは「バックに誰かがいるから仕事できているんだ」と根も葉もないことを言われたこともあります。「若いのにすごいね」「女性なのにすごいね」「女子大生なのに仕事で成果出してすごいね」といった、褒めているつもりで発された偏見の言葉。これを投げかけられるのは日常茶飯事です。若い女性が仕事にコミットすることが、社会の中で珍しいことのように扱われているこの現状に違和感を感じざるを得ない。それが私自身の原体験の一つとしては大きくあるように思います。

 「女性」だけでなく、職業や年齢、国籍などさまざまな属性で理不尽なレッテルや偏見による、不均衡が存在しています。それらの不均衡を、私はビジネスの世界から変えていきたい。誰もが自身の存在や選択を尊重し合える社会に変えていきたい。広告クリエイティブを担うクリエイティブディレクターとして、一つはコミュニケーションの領域を、そしてもう一つは起業家として具体的な課題解決のアクションの領域を。その両軸でこれからも取り組んでいきたいです。

 分断や対立や競合といった障壁を越えて、さまざまな業界や組織形態にいる人たちが、それぞれのフィールドで立ち上がり、時に越境し合い連帯が生まれる、そんな時代にこれからはシフトしていかなければいけないなと強く思います。広告屋は偏見を発信する側だから、メディアは偏見をあおる側だから、政治家は皆利権側だから、男性は加害側だから、などと分断や線引きをせず、各領域でどんな状況でも立ち上がり進もうとする同志たちがいると信じ、彼らと連帯しながら少しづつでも日本のこの状況を変えていけたらと強く思っています。私は今自分がいるフィールドで何ができるのか、日々自問自答しながら2020年もまた奮闘していく所存です。

文/辻愛沙子