世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月17日に発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等指数)」。日本の順位は調査対象153カ国のうち121位とさらに後退し、「過去最低」のスコアとなった。ジェンダー・ギャップ指数とは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目のデータを基にして、それぞれの国の男女格差を分析したものだ。女性活躍を政府・企業ともに推進しているはずが、中国・韓国・アラブ首長国連邦より下位に評価された日本。各界のリーダー達に意見を聞いた。

島田由香/ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役 人事総務本部長(CHRO)
島田由香/ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役 人事総務本部長(CHRO)
慶応義塾大学総合政策学部卒業後、パソナに入社。人材関連事業、ジョイントベンチャーの立ち上げなどに携わり、米国コロンビア大学大学院へ。2002年に組織心理学修士を取得後、GEで多様な事業分野のHRマネジメントに携わる。2008年にユニリーバ・ジャパンに入社し、HRマネジャー、ダイレクターを歴任。オリジナルのリーダー人材育成プログラムの開発など、過去に例のないチャレンジを数々実行。2014年より現職。

相対より絶対比較 進歩・進化があるなら続ける

 この1年ものすごく頑張ったのにパフォーマンスが上がらない。それどころか下がってしまった。そんな状況が自分に起きたとしたらどうするでしょうか。やり方を変える? もっと頑張る? それとも、諦める?

 人材育成・組織開発の視点からするとそのどれも正しい選択とは言えません。社員一人ひとりの状態が組織のそれを決めるから。組織として何かを変えたいなら、少しでもよくしたいなら、社員個人が変わる、よくなることが不可欠なのです。

 日本という国を一つの企業に見立てるなら、ジェンダーギャップ指数はその成績の一つです。その順位が2018年の110位から下がり、今年はなんと121位(G7で最下位)になりました。このニュースに、私の周囲もざわざわしています。

 「自分はこんなに頑張ってるのになぜ?」と思うとき、意識したいのは、相対的な位置よりも絶対値として自分が出した結果です。今回のことに当てはめるなら、順位よりも実際の数値。他国の数値が上がっているから日本の数値が変わらない、または上がっても他国よりも上がり幅が小さければ、相対的な順位は下がります。

 当たり前のことですが、私たちは無意識に誰かと比べてしまい、自己否定のマインドセットを持ってしまう。進化・進歩というのは、過去の自分との比較からしか分からないはずなのに、他の誰かと比べることによって、本来、進化や進歩によって感じる幸福よりも優越感や劣等感を持ってしまうのです。

 今回の状況を受けて、本当にやるべきは、ジェンダーギャップをなくすことの本当の目的の確認とその徹底だと思います。つまり、何のためにやるのか?を明確に理解し、今やっていることが本当に意味と効果があるアクションなのかを再確認すること。過去の日本の状況と比べて、進歩・進化があるなら、続けていけばいいのです。

本当の目的達成のために必要なこと

 ただ、がむしゃらに突き進んでも、向かっている方向が違っていたら、手段の実施が目的に成り下がっていたら、本当の目的は達成できません。私たちの本当の目的とは、確実にジェンダーの格差を縮めることで、誰もが生き生きと豊かに生きることのできるよりよい社会、より幸せな社会の実現であるはず。

 順位の上下に一喜一憂するよりも、本当の目的の達成に必要なアクションは継続し、見直した結果、やめるもの、始めるものを明確にすること。そして、楽しんで取り組んでいく姿勢をみんなで意識するきっかけとして今回の結果を捉えられたらいい、そう思います。