コロナ禍以降、人とのリアルな接点が薄らぐ中で、「思いを言葉にする力」がより求められている。広告代理店・博報堂を定年退職後もスピーチライターとして活躍する博報堂フェローのひきたよしあきさんとインフルエンサーで、日経doorsでも「私と夫と子どもの話 byはあちゅう」を連載中のはあちゅうさんの新春特別対談。日々心の声と大切に向き合いながら、言葉の可能性を追求している二人に、言葉で伝える力を磨く方法と、20代からの人生をより充実したものにするためのアドバイスを聞いた。

(1)はあちゅう×ひきたよしあき 相手に伝わる言葉磨く方法
(2)はあちゅう 20代はブラックな野心が成長を後押しした
(3)ひきたよしあき 「自分への弔辞」で人生の目標が定まる
(4)はあちゅう×ひきたよしあき 20代でやっておきたいこと ←今回はここ

挑戦して自分の殻を破る経験が大事

日経doors編集部(以下、――) お二人が20代のときにやっておいて良かったと今、思うことは何でしょう?

はあちゅうさん(以下、敬称略) 私の場合は、転職と独立ですね。今振り返ってみて、もしも30代だったら怖くて踏み出せなかったと思います。

 意外に思われるかもしれませんが、私は、割と保守的なところがあるんです。父は大企業の会社員、母は専業主婦といういわゆるステレオタイプの家庭で育ったこともあり、どこかで「良い大学に行って良い会社に入れば良い人生」という価値観を持っていたんですね。それを自分から初めて断ち切ろうとしたのが、転職と独立でした。しかも電通に入社してまだ2年目。「本当に辞めていいの?」と散々言われましたし、自分でも不安はありました。周りからすれば、「しれっと辞めてるな」と思われていたかもしれませんが、自分の中では大きなチャレンジであり、勇気を出して、人と違う選択を選び取った決断でした。

 会社員時代は、自分のいた会社と広告業界しか見えておらず、電通の常識=世の中の常識くらいに思っていたところがあったんです。でも、いったんそれを断ち切って別の環境に飛び込み、新人からやり直すという経験をしたことが、その後の自分の人生を大きく変えてくれました。転職に限ったことではないですが、若いうちに何かに挑戦して自分の殻を破る、人と違う経験をしてみることは、人生において大事だなと実感していますね。

「保守的だった自分の常識を、自ら初めて断ち切ろうとしたのが転職と独立」と、はあちゅうさん
「保守的だった自分の常識を、自ら初めて断ち切ろうとしたのが転職と独立」と、はあちゅうさん