平日は残業や友人との付き合いなどで帰宅が遅く、毎日眠い目をこすって仕事をこなし、休日はほとんど寝て過ごして終わってしまう……。そんな生活を送るdoors読者も少なくないかもしれません。睡眠医学の発祥の地である米国スタンフォード大学の睡眠医学センターで臨床と研究を続ける河合真先生は、「日本人は慢性的な睡眠時間不足」と危機感を抱き、SNSで「寝よう!」と呼びかけています。第4回は「睡眠時間不足による健康被害」についてです。

睡眠時間不足で狭心症や心筋梗塞による死亡率が上昇

 皆さん、こんにちは。河合真です。

 「健康」の指標には、運動の有無や食事の摂取状況など、さまざまなものがあります。睡眠もそのひとつで、連載第2回(睡眠負債は質でカバーできない 浅い睡眠にも意味がある)でもお伝えしましたが、睡眠時間不足が長く続くと健康に悪影響が出てきます。

 過去、アメリカやイギリス、日本などの国々で睡眠時間と死亡率についての調査・研究が行われました。その結果、睡眠時間が7~8時間の人が最も死亡率が低く、それより短くても長くても死亡率がアップするということが分かりました。しかも、糖尿病や心筋梗塞、脳卒中など、生死に関わる疾患にかかるリスクが高くなることも判明したのです。私が何かと8時間睡眠の重要性を訴えるのは、このエビデンスに基づいています。

 少しデータが古くなりますが、2001年に厚生労働省から発表された「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」では、睡眠時間不足が脳・心臓疾患の発症と深く関連しているという報告が紹介されています。それによると、睡眠時間が6時間未満だと狭心症や心筋梗塞の有病率が上昇し、5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が上昇するとされています。

 さらに4時間以下になると、狭心症や心筋梗塞を含む冠動脈性心疾患による死亡率が、睡眠時間7時間以上8時間未満の人の約2倍に高まるとされています。睡眠時間不足は、生死に関わるということです。