平日は残業や友人との付き合いなどで帰宅が遅く、毎日眠い目をこすって仕事をこなし、休日はほとんど寝て過ごして終わってしまう……。そんな生活を送っているdoors読者も多いはず。睡眠医学発症の地である米国スタンフォード大学の睡眠医学センターで臨床と研究を続ける河合真先生は、「日本人は慢性的な睡眠時間不足」と危機感を抱き、SNSで「寝よう!」と呼びかけています。第7回は「睡眠の男女差」についてです。

 皆さん、こんにちは。河合真です。

 前回「『若いから無理がきく』の誤解 年齢と睡眠の意外な真実」では、睡眠には年齢差があるというお話をしましたが、実は男女でも違いがあります。

睡眠における性差

 性別による睡眠の差は、実は幼児期からあります。女児は男児に比べて睡眠時間が長く睡眠効率が高いです。10代は極端な眠り方(6時間以下とか10時間以上)をする女性が男性よりも増えます。そして、成人の女性は男性よりも睡眠時間が長く、睡眠の問題を訴えることが増えます。

 さらに女性は、初潮を迎えると、女性ホルモン分泌のサイクルによって睡眠に影響が出ます排卵期ごろ~月経前ごろまで、とても眠くなると感じているdoors読者も多いのではないでしょうか。これは、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の分泌が盛んになる黄体期と一致します。

生理前の眠気や睡眠の質の低下

 黄体ホルモンは、脳の活動に対して抑制的に働くことが知られているのですが、睡眠の客観的データとしてはっきりと因果関係を示すデータは出ていません。そして、妊娠しなければ黄体ホルモンが減少して月経が生じるのですが、この月経前から月経初期にかけて「睡眠の問題」「睡眠の質の低下」を訴える女性が増えます。

 これらの現象は実は年齢による差も大きいのですが、個人差も非常に大きいです。特に、生理不順や月経痛がひどい女性が月経前後で睡眠の質が低下することは知られています。女性ホルモンによる治療をすることでこれらの睡眠の問題が軽減することもありますので、医師に相談してもらいたいと思います。

女性の睡眠は女性ホルモンの影響を受ける
女性の睡眠は女性ホルモンの影響を受ける

 そして、前回「『若いから無理がきく』の誤解 年齢と睡眠の意外な真実」でお話ししたように女性ホルモンによって閉経前まで女性は男性と比べて閉塞性睡眠時無呼吸症候群が少ないことが分かっています。女性ホルモンによって気道が閉塞しにくくなるというのは面白いのですが、妊娠して体重が増えても酸素を取り入れることが可能なように女性の体を守っていると言えます。

 さらに、年齢を重ねると男性より女性のほうが、加齢で減少することが知られている深い睡眠である「徐波睡眠(ノンレム睡眠)」の割合が高いままの傾向があります。ただし、このメカニズムもよく分かっていません。