最も健康被害が少ないのは8時間睡眠

 私は今40代後半なのですが、自分たちが小学生のときは、親に「寝なさい!」と叱られながらテレビ番組の「8時だヨ! 全員集合」を見て、番組が終わった午後9時ごろには布団に入っていました。翌朝学校に行くために午前7時に起きるとして、睡眠時間は9~10時間程度取れていたと思います。このように、かつての日本人は、当たり前のように「だいたい何歳くらいの人が何時に就寝して何時に起きるべきか」という常識が共有されていました。そして、大人でも毎日8時間程度の睡眠時間を取ることが常識だったのです。

 睡眠に関する研究はさまざまありますが、最も健康被害が少ないとされ、推奨される睡眠時間は、新生児で14~17時間、幼児で11~14時間、小学生で9~11時間、ティーンエージャーで8~10時間です。子どもから大人になるにつれて少なくなっていきますが、90%以上の人にとっては、40~50代になっても8時間睡眠が最も健康被害が少ないことが分かっています。この数字は60代になってもさほど変わらず、7~7時間30分の睡眠時間が推奨されています。

 こういうことを言うと決まって「今どきそんなに寝る人はいない」といった言葉が返ってきますが、決して無理な話ではありません。例えば私が生活している米国では、労働者のほぼ全員が午後5時~5時半、つまり定時に退社します。週末は遊びに行く人が多いですが、平日はまっすぐ帰宅する人がほとんど。仕事の付き合いで飲みに行くこともまずないので、家に着くのは午後6~7時ごろになります。それから夕食を食べて、入浴して午後9~10時には就寝します。

 彼らに、「ちゃんと寝られていいね」と言うと、「だって、8時間寝なくちゃいけないんでしょ」という答えが返ってきます。彼らには、「まずは睡眠時間を確保する」という、非常にしっかりした睡眠リテラシーがあるのです

 ところが、今の日本では、午後10時より前に帰宅するビジネスパーソンは少なく、午後11時のテレビニュースを見ながら夕食を食べるという生活が一般的になっているように感じます。若い人はなおさらそうでしょう。そうなると、どんなに急いで食事をして入浴したとしても、布団に入るのは午前0時から1時くらい。布団に入ったからといってすぐに眠りに入れるわけではないので、翌朝出社するために7時に起きるとすると、睡眠時間は6~7時間未満になります。

 研究によって多少の差はありますが、成人の場合、睡眠時間が7時間未満であれば、睡眠不足と考えていいと思います。