その睡眠時間であと30年働けるか?

 さらに、最近は朝の出社前の時間を趣味や自己啓発に活用する「朝活」が盛んになっています。すると、起きる時間がより早くなるので、その分睡眠時間が短くなっていると考えられます。

 実際、厚生労働省の平成27年「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満と答えた20歳以上の人の割合は、10年間で4.1ポイント増加しています。7時間未満しか睡眠時間が取れていない人の合計は、73.6%。つまり、多くの日本人が十分な睡眠時間が取れていない状態です。

 それでも、「睡眠時間なんて6時間寝れば十分でしょ?」とか「睡眠時間が短くても、質が高ければ大丈夫」などという声が聞こえてきます。日本人の睡眠リテラシーは、この何十年かの間に根底からゆらいでしまったようです。

 はっきり言いましょう。睡眠はまず量を確保してこそ。質がどうとかはしっかり8時間寝ている人が、それでもなんらかの問題が起こったときに考えるべきことで、まずは寝なくては話にならないのです。「質より(先に)量」なのです!

 もちろん、仕事が忙しくて、寝たいけれども寝られないという人もいるでしょう。繁忙期はやむを得ないこともあるでしょうし、1~2週間程度であれば身体的にも精神的にも耐えられるとは思います。必要とする睡眠時間には多少の個人差もあります。ただ、今20~30代の皆さんは、これから少なくとも30~40年以上働くわけです。その間ずっと睡眠不足を続けたらどうなるか。果たしてそれは持続可能な生活なのかを考えなければならないと思うのです。

 睡眠不足が積み重なっていけば、体に重大な影響を及ぼす健康被害が出かねません。好きな仕事に就けたとしても、恒久的に睡眠時間が不足していたら、その仕事自体を続けることができなくなってしまいます。睡眠時間をきちんと8時間確保することで、好きな仕事を続けられる。そのことの価値を、皆さんにはぜひ考えてほしいと思います。

 本来は、職場や業界、日本の社会全体の認識を変えることが必要ですが、それには、まず一人ひとりが睡眠リテラシーを取り戻すことが欠かせません。だから、私はことあるごとに「寝よう」と呼びかけています。日経doorsの読者の皆さんにお伝えしたいことも、肝心なことはただ一言、「まず8時間寝る」。これに尽きます。

取材・文/荒木晶子、日経doors編集部 イメージカット/PIXTA