テレワークなどで時間に余裕ができたら挑戦してみたいのが副業。お小遣い稼ぎになるだけでなく、本業で必要なスキルを磨き上げることにつながったり、人脈の構築や転職する際のアピール材料として使えたりすることも。副業の賢い始め方を伝授します。

人材サービス会社・アールナインで働く胡桃茅里(くるみちさと)さん。フルリモートの働き方をしながら、就業時間外を活用して不動産会社の仕事を手伝っている。住んでいる土地への愛着と、未来の夢に近づくためのスキルアップが両立の原動力。理想の働き方をかなえつつ、周囲も応援するWin-Winな副業スタイルが成り立つまでにどのようなアクションを起こしたのか、詳しく聞いた。

 胡桃茅里さん(27歳)は、採用のアウトソーシングや人材コンサルティングなどを手掛けるアールナインの総務秘書。キャリアコンサルタントとして同社で採用業務なども行う胡桃さんが、自宅近くで副業を始めたのは2020年10月。「『今住んでいる土地をもっと好きになりたい』という思いで参加した地域の交流イベントの主催者が、副業先の福地真吾社長でした」と、出会いのきっかけを語る。

<DATA>胡桃茅里さん(27歳)<本業>アールナイン 総務秘書・キャリアコンサルタント<副業>福街不動産 総務事務・PR・物件案内(2020年10月から)<本業の副業制度>・就業時間外に週10時間まで/・直属の上司、副業制度を管轄する取締役、社長への許可申請が必要

 「前職で東京都内の借り上げ社宅に住んでいたとき、自宅が『寝に帰る場所』になってしまったのが心残りで……。転職を機に今住んでいる元住吉(神奈川県川崎市)エリアで一人暮らしを始めて以来、プライベートの時間をもっと楽しむために、地域の面白そうなイベントに参加したいとアンテナを張っていたところ、ニューヨーク滞在経験のある地域のデザイナーの方を招いた座談会イベントをフェイスブックで知り参加しました」

 その座談会を主催していたのが、福街不動産社長の福地さん。「人との信頼関係と交流の先にビジネスを展開したい」という思いで独立・起業した福地さんは元カフェの店舗スペースを活用して、不動産に関する勉強会や元住吉の魅力について語り合う地域交流イベントを不定期で開催していた。

 キャリアカウンセラーの資格を生かし、プライベートで無料のキャリア相談やミニセミナーを行う「キャリア・カフェ」の活動を始めていた胡桃さんは、福地さんと意気投合。地域との交流や学びの機会と捉えて、福街不動産のイベント運営を無償で手伝うようになり、その後、副業として深く関わるようになった。

 アールナインには副業制度があるものの、社内でも珍しいダブルワーク的な副業を始めるにあたり、胡桃さんは本業の上司が懸念しそうなリスクを事前に整理し、丁寧にすり合わせをしたという。中でもポイントとなったのが以下の6つ。

<胡桃さんの副業に関する本業の6つのリスク>1.体調管理/2.長時間連絡が取れない/3.平日夕方5時から副業を行う必要性/4.「本業はテレワーク、副業は出社」の理由と新型コロナウイルス感染予防対策/5.副業先への転職リスク/6.会社のノウハウが他社に流出するリスク

 副業がもたらす本業へのメリットや得られるスキルも明確にしながら、前向きな理解を得られるように伝え方を工夫したという胡桃さん。プロボノで手伝っていた仕事が副業となった理由、上司の不安を納得に変えた具体的な交渉ノウハウを、次のページから紹介する。

<副業のきっかけ>住まいのエリアにある不動産会社で開催された地域交流イベントに参加。イベントの運営や○○などを無償で手伝ううちに、○○を知り立候補。<副業頻度>週10時間(主に平日週○○回・17時から○○時間、土曜または日曜の○○時間)<副業収入>月5万~○○万円<副業を通じて得られたこと>□ 本業のテレワークへの移行に伴い、新たに生まれた自分の時間を有効活用できる/□ キャリアコンサルタントとして、自ら新しい働き方を実体験/□ 本業では得られない経験(大胆なチャレンジ、○○力の向上)/□ 住む町での人のつながりが深まった/□ 過去の経験すべてが今に生き、未来のキャリアにつながる自信と実感
本業の就業時間後、自宅から自転車で副業先の福街不動産に移動する胡桃さん
本業の就業時間後、自宅から自転車で副業先の福街不動産に移動する胡桃さん