いつか自分の理想の働き方ですきなことをとことん追求したい――。そんなとき選択肢に上がるのが「起業」。起業するために今すべきことを若手起業家からあますことなく教えてもらいました。

人材紹介会社の営業職から転身し2017年8月、27歳で起業した金井芽衣さん。キャリアのパーソナル・トレーニングを展開するポジウィルで人材業界では難しいとされていた個人がサービス料金を支払うビジネスモデルを構築、事業を成長させている。起業までのアクションや失敗経験からの学びについて話を聞いた。

「事業化に最低3年」父の助言で20代起業

 キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)」を展開する金井芽衣さん。「転職を含めキャリアにもやもやを抱えている人」をターゲットに、キャリアの軸づくりをマンツーマン体制でサポートし、個人の悩みに寄り添ったサービスが注目を集めている。

 金井さんは、2017年4月(27歳)に大手転職エージェントを退職。2017年8月(27歳)での起業は、30代以降のキャリアや人生設計を見据えて決断したのだという。

金井芽衣/ポジウィル 代表取締役
金井芽衣/ポジウィル 代表取締役
1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭免許を取得した後、法政大学キャリアデザイン学部3年次に編入、キャリアカウンセリングを学ぶ。卒業後、リクルートキャリアに入社し法人営業を経験。2017年4月に退社、同年8月にポジウィルを設立。国家資格キャリアコンサルタント。

 「保育士を目指していた短大時代に実習で児童虐待の現実を知り、虐待せざるを得ない親のストレスや環境に問題がある社会構造を変えたいと思うようになりました。中でも、人生の大きな割合を占める働き方を変える仕組みを考えたいとキャリアカウンセリングを学ぶことを決意し、大学に編入。キャリアカウンセリングに出合ったことで『自分はどう生きたいか』を考え、私自身の人生が変わったんです。キャリアカウンセリングをもっと社会に広めたいという思いがあり、将来的な独立を考えていました

 独立を視野に、2017年にキャリアコンサルタントの国家資格を取得。もともとは「社会人10年目までに」としていた起業の予定を早めたのは、「20代で頑張ったことが人生の武器になる」という考えがあったからだ。

 「転職希望者の相談に応じる中で、キャリアの意思決定のときに、『自分がどうありたいか』という軸がないまま決断し、転職後も同じ悩みを繰り返してしまう人が多過ぎると感じていたんです。そうした課題意識から自分の人生設計についても改めて考えていたときに、『人生は20代で決まる』(早川書房)という本と出合い、『キャリア、生涯賃金、パートナー、パーソナリティーは20代の間にほとんどが決まってしまう』という内容が心に刺さりました。仕事柄、転職市場における年齢の価値をシビアに感じていたこともあり、20代をいかに悔いなく過ごし、自分の価値を高められるかが大事だと考えていましたね」

 「そんなとき、経営者の父から『事業が軌道に乗るまでに3年はかかる』と言われたんです。当時の私は30歳までに結婚して、子どもを産みたいと思っていました。30代・40代を見据えて、行動するなら1日でも早いほうがいいと考えて27歳で起業しました」

 金井さんは、これまでに総額約3億円の資金調達を経ながら、顧客ニーズを捉えた事業を成長させてきた。しかし、起業当初の自己資金はほとんどなく、「退社後も人材紹介や研修で稼げるアテはあるといった甘い考えで独立を決めた」と振り返る。事業が急成長を遂げたがゆえに、「起業して起こるであろう、すべての地雷は踏んできた」と明るく笑う金井さん。事業化に至る転機や起業経験の学びを、次のページから紹介していく。

<20代起業 事業が軌道に乗るまでの歩み>DATA/会社名 ポジウィル/設立 2019年3月現在/従業員 21人 /事業内容 キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREERの運営」/<起業前、直後にしたこと>・「自分がどう生きたいか」の人生設計/・会社を独立した先輩に話を聞き、退職前に独立後の概算収支を把握/・独立後の○○を確保し、○○環境づくり/・顧客ニーズの地道なリサーチ/・○○を活用した自己ブランディング/・○○融資350万円/・○○との接点づくり<起業前にしておけばよかったこと>・貯蓄/・○○について最低限の知識を学んでおくこと<起業後、事業成長期に苦労したこと>・組織崩壊、資金繰り悪化、顧客トラブルを同時期に経験