いつか自分の理想の働き方ですきなことをとことん追求したい――。そんなとき選択肢に上がるのが「起業」。起業するために今すべきことを若手起業家からあますことなく教えてもらいました。

成井五久実(なるい・いくみ)さんは、今から5年前、28歳のときに一念発起してウェブメディアの運営を行うJION(ジオン)を設立し、立ち上げからわずか5カ月で黒字化を達成。起業から約1年後には、その事業を売却。そして現在は、売却先であるベクトルグループ傘下の企業・スマートメディアで代表を務めている。「30歳までに起業する」という目標を掲げ、見事それを成し遂げた成井さんに、自身が起業するまでのストーリーと、「いつか起業したい」と思っている人が今から準備しておけることを聞いた。

成井さんの意識を変えた原体験

 成井さんの起業の原点は、両親の存在。18歳まで福島県で暮らしていた彼女は、会社経営をする父親と、臨床心理士として活躍する母親の下で何不自由なく暮らしていた。それが一転。中学2年生のときに父親の会社が倒産し、一家離散の危機に陥ったのだという。

 「父の代わりに家計を支えることになった母が、カウンセリングルームを開業し、経営者として抜群のセンスを発揮したんです。これによって父が抱えていた負債も返済でき、2年後には元の生活に戻ることができました」

 この原体験が、成井さんの意識を大きく変えた。「女性も手に職をつけて、一人でも生きていけるようになることが大切だと思いました。だから、将来的には起業も視野に入れ、母と同じ臨床心理士になることを目指して大学受験をしたのです」

 しかし、第1志望のお茶の水女子大学には不合格。「起業するには国立大学でなければ」という思いはあったものの、浪人は選ばず東京女子大学に進学した。

 「第1志望に合格できなかったとはいえ、入学したら気持ちを切り替え、大学生活を謳歌していました。振り返って考えてみると、東京女子大学で心理学と女性学を学べたことは、とても貴重な体験でした。でも、大学2年生になると、『大学生活を楽しむだけでいいのかな?』と思うようになって。いつか起業したいという夢に近づくために、東京大学の起業サークル・TNKに入りました

 そしてこの選択が、「のちに起業するときの大きな助けになった」という。

成井五久実さんの起業までの道のり
いつか起業するために20代・30代ですべきこと