いつか自分の理想の働き方ですきなことをとことん追求したい――。そんなとき選択肢に上がるのが「起業」。起業するために今すべきことを若手起業家からあますことなく教えてもらいました。

「いつか起業したい」と考えている人は、起業に伴うリスクや事業を軌道に乗せるために必要なポイントを押さえておくことが大切です。「起業前の準備段階から、最も変化が激しい起業2年後まで」を徹底的にサポートすることで、担当した企業の創業2年後の事業継続率が8割以上という実績を維持している起業コンサルタントの金原隆之さん。起業の準備段階で大切なことをまとめた前編「起業で成功する人の法則 荒波を乗り切る必勝準備リスト」に引き続き、後編では、起業後5年間を見据えたToDoリスト、事業の成長期に直面しがちな壁への対処法について紹介します。

成功する人は起業後半年以内に動き出す

 会社員としてのキャリアを懸命に駆け抜け、夢の独立を果たした直後は、事業運営で忙しくなる前に休息期間を取りたいと思いがち。「起業をした人の多くは、達成感に包まれて起業後パワーダウンをしてしまいます」と金原さん。しかし、起業後のタイミングは、その後の事業継続においてとても重要な時期だと注意を促します。

 「遅くても起業後の半年以内、理想は3カ月以内に、『創業期間』と呼ばれる激動の起業後2年間を生き抜くための準備を始めます。具体的には、『起業前の仮説を見直す』『ブルーオーシャン(競争相手がいない未開拓の分野)戦略を探る(3C分析)』『商品・サービスの価格設定』『キラーコンテンツ(収益商品)をつくる』といったことを行い、トライアルアンドエラーを繰り返しながら収益構造をつくります」

 「この半年間のタイミングを逃してしまうと、日々の業務や数字に追われて事業の赤字体質を改善できないままに時間が過ぎてしまいます。物理的にも精神的にも厳しいランウェイ期間を乗り切るためには、自社の技術力、企画力、マーケティング力を高め続けるしか方法はありません。仮説を基に商品・サービスを実際に市場へ出してみて、期待通りにいかないときは、仮説を疑って現実を直視し、初期ユーザーの獲得と新たなマーケティング戦略を立てる軌道修正能力が大切になってきます」

 仮説の立て方と3C分析、ランウェイ期間については、
前編「起業で成功する人の法則 荒波を乗り切る必勝準備リスト

 仮説が大きく覆されたときは、どのように対処したらいいのでしょうか。

 「起業後の半年間は、マーケティング手法を効果的に取り入れながら、小さな改善を早く繰り返し仕掛けていくことで収益構造を生み出す可能性が高まります。必ず押さえておきたいのが、PDCAサイクル。Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の段階に当てはめて考えます。このとき、起業前に立てた仮説を疑うことができるかどうかも大事。時間をかけて自分で考え苦労してつくったものを否定するのは、勇気が必要です。創業期間の変化は特に早いので、状況に合わせて臨機応変に行動を起こしていけるかどうかが成功の鍵を握ります」

<改善のための検証PDCA> → 起業後の半年間で、小さく速く回していく/P…仮説を立てる(ターゲットを設定/競合分析・自社分析/商品設計を行う)/D…商品・サービスを市場に出して、売れるかどうかを調査する/C…テスト結果を踏まえて、商品・サービスの評価をする/A…評価に基づき改善して、本格的に販売する

 次のページから、キラーコンテンツの生み出し方や事業の成長期に役立つ基礎知識についてさらに話を聞きます。

<敏腕起業コンサル直伝! 事業成功のためのToDoリスト>/フェーズ1:起業前・起業準備期間(前編)/・起業家としてのマインドセットの確立/・過去・現在・未来の自分をつなぐ起業ストーリーの構築/・3C分析で、ターゲット層を絞り込む/・顧客ニーズや事業開始後の収支、ランウェイ期間について仮説を立てる/・自己資金の貯蓄、資金調達/フェーズ2:起業後2年間(創業期間)(後編)/(1)半年以内/・創業期間の戦いの準備を開始/・ブルーオーシャン戦略を探る/・商品・サービスの価格設定/・FFMB戦略を構築し、キラーコンテンツをつくる/・起業前の仮説を見直し、小さなPDCAをたくさん行う(3C分析の精査)/(2)1年~2年/・資金繰りの見直し/・事業の1年間の成績を確認/フェーズ3:起業後3~5年間(後編)/・イノベーション(新たな価値創出)の準備/・既存の商品・サービスの見直し/・経営計画の作成/・決算書作成(銀行などへの融資相談)/・逆境・失敗を乗り越える強さを備える