新しいキャリアを築くための選択肢は転職だけではありません。むしろ転職にはリスクを伴うことも。「転職せずに今の会社であっても、気持ちの切り替えや、仕事に向き合う姿勢を変えることがキャリアアップの近道になることもあります」と、MYコンパス代表の岩橋ひかりさんは言います。すぐに転職へ舵(かじ)を切るのではなく、まずは今の会社でできるキャリアアップする方法を教えてもらいました。

MYコンパス代表 岩橋ひかりさん
MYコンパス代表 岩橋ひかりさん

今の会社でできるキャリアアップ法

 キャリアコンサルタントとして活躍する岩橋さんの元には、将来を見据えて「転職するか、現職にとどまるか」と迷う女性からの相談も多いそう。

 「キャリアアップの選択肢は転職だけではありません。転職によって大きく変化することはできるけれど、転職先の仕事内容が本当に自分に合うのか、そこでの人間関係がスムーズに構築できるかなどリスクも少なくありません。実際には、今の会社で仕事や職場への向き合い方が変わるコツを見出したら、イキイキと働けるようになったという声も多いもの。まずは今の職場での向き合い方を変える方が、キャリアを上向かせる近道になる可能性もあります」

 もっと自分らしい働き方を見つけたいけれど、転職するまでもない――。そう考えたときに、今の会社でキャリアアップするためのノウハウをご紹介します。

1.気持ちを「書き出して」みる

 「今の会社でキャリアアップする方法」と言うと、「自分が劇的に変わるような大きなこと」を考えがち。けれど、「まずは、『頭』で考えるのではなく、『心』で考えることから始めてほしい」と岩橋さんは言います。

 そのステップの1つとして、「嫌なことを100個書き出してみる」というワークを推奨している岩橋さん。これは、転職を考えるかどうかの判断基準にも使えるそう。「不満を書き出してみると、案外それだけで気持ちが落ち着き、転職するまでもないことだったと気付く人も多い」のだとか。

 「夢や、『こうなりたい』と思う姿を書くのも大事なこと。しかし、自分が何に不満を抱いているのかは意外と言語化していないのではないでしょうか。

 まずは小さなことでも良いので書き出してみましょう。必ずしもノートに手書きしなくても、スマートフォンに打ち込んでもかまいません。そのとき、ネガティブな気持ちをむりやりポジティブに転換しないでいい。まずそれは事実として捉え、客観的に見ることが重要です

 書き出すタイミングは、モヤモヤする、何か引っ掛かるなと思うことがあったとき。

 「時短勤務で働く女性は早く帰らなければならないため、『引け目を感じる』とよく聞きます。例えば、少し馬の合わない上司から、帰り際に『あの仕事、どうなっているの?』と聞かれたとする。瞬時に自分が責められたと思い、モヤモヤしてしまう。

 これを言葉に書くと、『退社前に、上司から仕事の進捗を聞かれた』。上司は至極まっとうなことを言ったまでだと気付きますよね。言語化し、起きたことだけを俯瞰(ふかん)して見るようにすると、不満がスッと引くことがあります。後ろめたい気持ちもなくなり、『すみません』ではなく『ありがとう』という感謝の気持ちになります。

 このように嫌なことを書き出してみると、その後も職場の人間関係などに余計なストレスを感じなくてすむようになりますよ」