会社員でありながら、やりたいことに挑戦できる新規事業。多くの企業が新規事業を育てたいと願っている今、チャンスが眠っています。新規事業の成功ルールを、事例を交えて紹介します。

どこにもないユニークな新規事業を生み出すには、発想力はもとより、上司や会社の上層部を説得し、ゴーサインをもらうための行動力が不可欠。スープ専門店、スープストックトーキョーを展開するスマイルズで数々のユニーク新規事業を手掛けてきたクリエイティブ本部長の野崎亙さんにその秘訣を聞いた。

日経doors編集部(以下、――) 日経doors読者の中には、社内の新規事業を立ち上げたり任されたりしている人が増えています。やりがいがある半面、責任感が大きいことから不安を抱えている人も少なくありません。

 いざ新規事業の担当者になっても、上司の承認がなかなか得られずに苦労します。承認を得るにはどうしたらいいのでしょう?

野崎亙さん(以下、野崎) 新規事業における最大のボトルネックは上司ですよね。新規事業の立ち上げ経験がない上司がほとんどですから、価値判断基準がないんです。一般的に、まず「新規事業準備室」という部署を作ってメンバーとなる社員を集めますが、「呼ばれたから」という人ばかりが集まるのでそこでモチベーションは湧いていないし、自己発意ではない。事業計画書を上司に提出しても「(この事業案は)どこまで実現可能性があるんだ」と聞かれ、「分からないです」と持ち帰る。

スマイルズ 取締役 兼 クリエイティブ本部本部長の野崎亙さん。大人も子ども楽しめるファミリーレスントラン「100本のスプーン」など数々の新規事業を立ち上げた経験の持ち主
スマイルズ 取締役 兼 クリエイティブ本部本部長の野崎亙さん。大人も子ども楽しめるファミリーレスントラン「100本のスプーン」など数々の新規事業を立ち上げた経験の持ち主

 こんなことを繰り返していては、一向に事業は立ち上がらない。これが日本の多くの企業で起きています。「この事業は成功するのか?」……、これほどの愚問はないんです。成功することが分かっていれば、とっくに誰か別の人がやってるわ!と言う話なので(笑)。

―― た、確かに……。スマイルズは子どもも大人も楽しめるファミリーレストラン「100本のスプーン」や海苔弁専門店の「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」などユニークな新規事業を次々に生み出しています。どのように生み出し、どんな判断基準でゴーサインを出しているのですか?

野崎 僕らの場合は、「これは世の中に新しい価値をもたらすかどうか」が判断基準です。「今この業界が盛り上げっている」「今後伸びそうな市場だから」という理由で事業を始めることは100%ない。自分たちの内発的な動機によって事業を生み出すことを大事にしています。

 ユニークネスということを大切にしつつ、他は誰もやっていないからやるというスタンスですね。ただ、ユニークな新規事業は前例がないから、なかなか生み出しにくいし、上司の承認も得にくい。ただ僕らにはこれまでの実績に基づいた賢いやり方があります。

―― ぜひ具体的に教えてください!

<スマイルズ ユニークな新規事業を生み出す秘訣>1 「自分ならどんなサービスがほしいのか」と自分ごととして考える/2 事業のコンセプトを分かりやすく説明し、メンバーや上司の心を掌握する/3 外部の評価を味方につけて、上司を説得する/4 上司に提案ではなく「相談」し、上司を「共犯者」にする
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