「『結婚できない』ではなく、『結婚しない』なんです」――doorsのファンミーティングで読者から「ぜひ特集してほしい」と強いリクエストがあったテーマ。「結婚しない」人生には何が起きる? どんな準備をすればいい? 専門家や実例、先輩の声をもとに、「結婚しない」のメリット・デメリットを探る。

鋭い観察眼が光る文章と、癖になる画風の漫画が人気の辛酸なめ子さん。漫画家でコラムニストとして活躍する彼女の「男性に頼らないで生きていく」という自立心が養われた学生時代のエピソードや、辛酸さんお気に入りの一人の自由な過ごし方を聞いた。

辛酸なめ子
漫画家、コラムニスト。1974年、東京都生まれ。鋭い観察眼と妄想力で人間関係や恋愛、海外セレブと幅広く執筆。近著に『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『無心セラピー』(双葉社)。

女子校で培った、男性に頼らないで生きていく「自立心」

 幼い頃は、両親のように「私も結婚するのかな」と漠然と思っていましたが……。結婚しないと選んだわけではないけれど、もしかするとこれまで通過してきた環境に、結婚を遠ざけていた一因があるのかもしれません。

 中学、高校は女子校に通っていました。そのためか、「男性に頼らないで生きていく」という自立心が養われたように思います。生徒は女性だけですから、力仕事も自分たちでやるしかない。生徒会も学校の行事も、すべての場面で活躍するのは女性です。先生たちも、男性より女性のほうが実権を握っていた印象でしたね。私の通っていた学校は特に自己主張の強い生徒が多く、とても勇気づけられました。昨今、ジェンダー平等の問題が多く取り上げられるようになりましたが、女子校だとそのベースができやすいのかな、なんて思います。

 高校を卒業して、美大に進学しました。そこには「結婚」を重視する人は少なかったので、自立心はさらに高まります。美術系は「個性」や、「相手に染まらないイメージ」が前面に出てしまうのか、男性に引かれがちです。私もよく男性から、「かわいげがない」「怖い」などと言われました。さらに、女子校で育ったからか男性への気遣いが苦手。そんな感じで、縁遠くなってしまったのかもしれません。

結婚するもしないも、自分で決めていい

「マンション購入を考えていたとき、不動産会社の人から息子さんを紹介されそうになったこともあります」
「マンション購入を考えていたとき、不動産会社の人から息子さんを紹介されそうになったこともあります」

 結婚について、母から何か言われたことはありませんでした。私が美術系の大学に進学した時点で、諦めていたみたいです。「美術系の男性はオオカミだから、危険よ」と言っていましたので、文系に進んでほしかったのかもしれません。けれど、私が出会った美術系の男性たちはまったく危険ではなく、むしろおとなしい人が多かったです。

 周囲の友人・知人たちが結婚をし始めたとき、「結婚はいいよ」と言う人もいれば、「結婚は絶対にしないほうがいいよ」と言う人もいました。どちらの意見もあるということは、結婚するもしないも、自分で決めていいのかなと思っていましたね。

 これまで、仕事も1つのことに固執せず、そのときそのときで自然な流れに任せて生きてきました。ですから不自然に婚活などをして空回りするよりは、結婚も流れに任せていいかなと思っています

 だんだんと、周りの人は結婚について何も言わなくなってきましたが、以前は雑誌などのメディアで価値観を押し付けられることがありました。30代の頃、ある雑誌のインタビューを受けたときは、「34歳で独身というのは何かあるのだろうか」と書かれたり、テレビ番組に出演したときは「婚活女性の最終兵器」というキャッチフレーズで紹介されたり。当時は今と違って、そういった理不尽さに耐えるしかなかった時代でしたね。