5月後半特集は「注目のあの人の仕事ルール」。起業家やヒットメーカー、SNSで注目されている女性たちには、運を引き寄せ、波に乗るための自分だけの習慣やルールがあるようです。そんな誰もが真似でき、すぐさま日常に取り入れられる、仕事ルールをご紹介します。

コロナ禍でマスクが必須の生活となり、日ごろメイクをする人は「マスクに付いてしまうから」「マスクをしているので塗っていなくても分からないから」と、口紅を付ける機会が減ったのではないだろうか。2021年5月に発売した「KATE リップモンスター」は、マスク生活が長引くなか累計出荷数が300万本を超える大ヒット。発売から1年がたつ今でも、新色が出ると瞬く間に売り切れてしまうほど、根強い人気を博している。「モノが売れない」と言われる時代に、人気商品を生み出した秘訣とは何か? 開発者の「仕事のマイルール」とともに、ヒットの理由を探った。

「マスク生活だから口紅は売れない」に疑問視

KATE 商品開発担当 宗田杏樹(そうだ・あんじゅ)さん
KATE 商品開発担当 宗田杏樹(そうだ・あんじゅ)さん

 2017年に入社した宗田さんがKATEの商品開発担当として異動したのは、2020年の1月。日本でも、新型コロナウイルスの感染者が出始めた頃だ。

 メイクアイテムの中では口紅が一番好きだという宗田さんは、「私自身はマスク生活でも『口紅を付けないとメイクが完成しない』と思っていました」と話す。

 宗田さんら商品開発のチームは「KATE リップモンスター」の開発に着手するものの、社内からは「この時期に、口紅は売れないだろう」といった声を多く耳にした。しかし、宗田さんたちはこの「マスクをしている=口紅が売れない」という既成概念を疑問視。「マスクをしていても口紅を塗りたい、楽しみたいと思っている人はいるのでは?」と考え、InstagramやTwitterなどSNSを利用してリアルな声を拾っていった。

 すると、やはり「マスク生活でも口紅を塗らないとメイクが完成しない」「食事の際など、マスクを外したときのために口紅をつけていたい」というニーズが若年層に多くあることが分かった。さらに、落ちにくい口紅は「色が変わりやすい」「唇が乾燥しやすい」という印象を持つ人もいて、これらの声が商品開発のヒントになった。

 そこで「長時間、付けたての色が持続」し、「マスクに付きにくい」「保湿」といった特徴を持つ、「KATE リップモンスター」を2021年5月に発売した。すると、瞬く間にSNSなどを中心に話題となり、売り切れが続出。発売から1年が経過した今もなお、人気が続いている。

 実は、爆発的な人気となったのは単なる偶然ではない。「『いかにバズを発生させるか』を意識し、戦略的に設計をしました」と宗田さん。マスク生活で売り上げが低迷した口紅だが、一体どのようにして「リップモンスター」はバズったのか。その秘密と、宗田さんの仕事に対するマイルールを聞いた。