コロナ禍で生き方や働き方が問われる今、必要なのは多様性。ジェンダーフラットな実例から、組織や個人の多様性の在り方を探る企画。日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト発足記念特集。
後編では「一般職が女性ばかりなのはなぜ?」「結婚すると重要案件を任せてもらえない?」など、会社や職場で感じたジェンダーギャップについて一橋大学大学院社会学研究科教授の佐藤文香さんと考えていく。いまだに根強くあるジェンダーギャップの背景を知るだけで、対応策が見えてくる。

前編 職場で女子力、家庭でワンオペ育児…どう対処する?
後編「女性には大変だから」一見思いやりでも差別 賢い戦い方 ←今回はここ

企業でも家庭でも、そもそもなぜ女性はアシスタントなのか

 IT系ベンチャー企業に勤務する高井真紀さん(仮名・41歳)は、女性の多くが、仕事内容にかかわらず「アシスタント」のポジション名で働いていることに疑問を抱いているという。そもそも、女性をアシスタント職として採用している企業が多いのは、なぜなのだろうか。

読者のステレオタイプを感じた体験 CASE3
高井真紀さん(仮名・41歳・IT企業)

 私の勤務先はIT系のベンチャー企業ということもあり、自由度が高く、あまり性差を感じずに働ける環境です。ただ、仕事上の役割には、まだまだジェンダーギャップがあると感じています。

 その一つが女性ばかりの「営業アシスタント」職。仕事の内容は、社内での事務が中心ですが、決してルーティンワークではないし、電話での折衝や資料作りなど、幅広い業務をこなしています。自分で判断しなければならない仕事も多く、どう見ても「アシスタント」のはんちゅうを超えている。それなのに、ポジション名が「営業アシスタント」であることに違和感を覚えます。

 会社の男性役員たちは大手企業出身で、チームに1、2人は女性アシスタントがいた環境で働いてきたので、仕事の内容に関わらず「女性=アシスタント」という固定観念があるのかもしれません。また、採用においても、営業アシスタントは女性を採ることが多いですし、応募者も女性ばかりです。ポジション名を変えれば、男性の応募もあるのでは……と思います。

 個人的には、「広く浅く」を求められる営業アシスタント職は、女性のほうが向いているとは思いますが、男性にも適性がある人はいるはず。性別ではなく、本人の適性や意向に合わせた業務に就けるよう、「営業アシスタント」「一般職」といったポジション名はなくしたほうがいいのでは、と思います。

 佐藤さんは「女性の事務職がアシスタントと呼ばれ続けるのは、前編のCASE 1と同じように、社会の根底にあるジェンダー秩序が影響しているからです。実際には、アシスタントをはるかに超えるような仕事をしていたとしても、『一般職』や『アシスタント』と名付けることで、男性が企業活動の主体であり、女性はその補佐をするという位置付けになってしまっているのです」と言う。

多くの企業には、まだまだ「女性=アシスタント」という固定観念があるのかもしれない
多くの企業には、まだまだ「女性=アシスタント」という固定観念があるのかもしれない
後半では「大きな仕事が回ってこないのは女性だから?」と感じたときの対処法を考えていく
後半では「大きな仕事が回ってこないのは女性だから?」と感じたときの対処法を考えていく