「いつか転職するつもり」「目標は、転職市場で価値を上げること」――20~30代は、転職意欲が高い。その一方で、転職活動が一筋縄にいかないという人も少なくない。転職後に「思っていた仕事と違う」「なんか会社の雰囲気が合わない」……などの理由で、再び転職活動に繰り出す人も。なぜ、私たちの転職は、うまくいかないのか。成功と失敗の分かれ道は何なのか。「失敗例」に学ぶ!

「もし、転職直後に妊娠したら?」。ライフイベントと転職が重なった場合、次の会社にどのように伝え、何をすればいいのだろうか。制度の壁に阻まれ、転職先を1カ月で退職し、リファラルで再就職を果たした山本恵美さん(仮名・32歳)の実体験をお届けする。

転職直後に妊娠が発覚、制度の壁に阻まれた

 「本当は今ごろ、上場企業の広報として新たなスタートを切っているはずでした……」

 今年1月に転職したばかりの会社をわずか1カ月で退職した山本恵美さん(仮名・32歳)は、こう話すと唇をかんだ。前職の元取引先から誘われ、スムーズな転職を果たした山本さんに、何が起こったのだろうか。

 「前職はスタートアップの広告代理店です。会社にも仕事内容にも不満はなく、毎日が充実。3年目を迎えてから『このままでいいのかな?』と思うときもありましたが、転職は本気で考えていませんでした。そんなとき、元取引先のIT企業から声を掛けられたんです」

 詳しく話を聞くと、そのIT企業では自社サービスのPR専門部署の新規立ち上げに伴い、広報経験者を探していた。しかし、なかなか条件に合う人材が見つからないため、PR経験の豊富な山本さんに白羽の矢が立ったという。

 「上場企業への憧れもあり、自社の魅力やサービスを発信する企業広報の仕事は大きな挑戦になると思いました。前の取引先が私を評価してくれたのもうれしかったし、業績も上向きで活気のある会社。またとないチャンスだと思い、転職を決めました。前職では引き留められましたが、円満退社できました」

 ところが、入社を2週間後に控えたある日、妊娠が発覚。数年前に結婚して以来、なかなか子どもを授かれなかった山本さんにとって、跳び上がるほどうれしい出来事だった。

 すぐに転職先の人事部に電話し、状況と出産後も働きたい意思を伝えると、好意的な答えが返ってきた。山本さんはすっかり安心して、新しい仕事への意欲を高めていたが、入社2日目に思わぬ事実を突き付けられてしまう。それは「入社1年未満の正社員の育児休暇取得、時短勤務は不可」という会社の規定だった。