迷ったときは先人に聞いてみる

 キャリアの中でいつ産むのが最適なのか。人それぞれ、一般解はない中で、自分の正解はどのように見つけていけばいいのでしょうか。

 仕事と育児両立のための研修などを手がけるスリール代表の堀江敦子さんは、「漠然と不安でモヤモヤ悩むときは、3年後にどうなっていたいかという自分の姿を描いてみましょう。そこから逆算すれば、いま分からないこと、悩んでいることは何か、自分が本当にどうしたいのかが見えてきます」と言います。

 両立の実態が分からなくて不安なら、同じ社内のワーママを探してランチに誘うなど、「先人」の話をたくさん聞くことを勧めます。

 「前向きに進んでいくために必要なのは『ロールモデル(先人)』、両立のための具体的な『選択肢』を知ること、そして『相談相手』です。相談相手は友達ではなく、先人や専門家が望ましいでしょう。友達だと『悩むよね~』と同調するだけにとどまってしまうことがあるためです」

 池原さんは、いつ産むかで悩む女性によく助言することがいくつかあると言います。

 1つは、まずは今の仕事やキャリアを突き詰めること。「リーダーなど裁量が増えるポジションを目指したほうがいいと思います。女性は管理職になると自信が一気に高まるという研究結果もあり、裁量を持って働くほうが、仕事と育児両立の満足度や充実度が高いからです」(池原さん)

 ただしキャリアアップの途上であっても、パートナーがいて妊娠したら出産を迷う必要はない、とも。「妊娠は不確実性があるので、機会があれば仕事にかかわらず、出産をためらう必要はありません」

 仕事や職場のその時々の状況に左右され、「いま産んだら周囲に迷惑がかかる」などと制限をかけてしまうこともありますが「自分の人生に責任を取れるのは自分だけ。仕事については妊娠した場合のシミュレーションを十分にした上で、制約があるからやめるのでなく、どうしたら諦めずに済むか、不測の事態に、仕事も私生活もどんなサポート体制が取れるかを戦略を立てて」

 そしてもう1つ、「チームを組んでおきましょう」と池原さん。「女性は、人に『助けてください』と言うのが結構、苦手なんです。精神的な支えになってくれる人、何でも相談できる人、いざというときにサポートしてくれる人のチームを作っておくといいですね」

 結局、正解はどこかにあるというよりは、「選択肢と解決策を知った上で、自分が納得して選んだ結果が、最終的に正解になっていくのではないでしょうか」(堀江さん)。「自分で決めて選んだことを、そこから正解にしていくというつもりで準備をしておけば気持ちが楽になります」(池原さん)

 この特集では次回から、先輩世代からのライフデザインの助言、早め/遅め出産を経験した女性たちのルポ、助産師さんに聞く「働きながらの妊娠出産」をお届けしていきます。

取材・文/秋山知子(日経doors編集部) 写真/都築雅人 イラスト/PIXTA