女性の仕事のピークは早く来る

 「女性のキャリアには2つのピークがあると思います。1つは20代の働き盛りのピーク。もう1つが40代後半以降で、男性とは明らかに違います」(漆さん)

 女性の最初のピークが20代にあることを考えれば、「早めにいろいろな経験をしてキャリアを積むことで、出産、復職してからも引き続き活躍しやすい環境ができるはず。企業側にも、そういう視点で人材育成のトラックを分けて考えてほしいと提言しています」

 最近は働き方の選択肢を増やし、働きやすさのための施策を打つ企業が増えてはいます。しかし「『働きやすさ』だけでなく、『活躍しやすさ』という視点も忘れてほしくない」と漆さんは言います。

 「例えば、出産して復職するときに元のポジションで活躍を続けられるのかどうか。育休後の復職率がどのくらいという一般的な数字だけでなく、どのポジションにどのくらい戻っているのかなど、仕事を選ぶ時点で把握しておく必要があるでしょう」

 同校の卒業生の進路やキャリアの選択には、以前とは違った傾向が出てきているそうです。

 「以前だったら、大学卒業後、一部上場の企業や金融機関に総合職で入社することを目指した卒業生たちが、最近はそうした大企業に内定をもらっていながらベンチャーや外資系企業に就職する人が出てきました。理由を聞くと、より早く自分を磨きたい、厳しい環境で早く力を付けたいからだといいます」

 また、早めに出産するケースも目立つそうです。会計士の資格を取って会計事務所に就職してすぐ出産したり、大学院に進学して在学中に院生同士で結婚、出産するケースなど。プライベートを前倒ししてその後にキャリアを積んでいく例と言えます。

自分のキャリアは一人で作らなくてもいい

 漆さんは以前、それぞれにキャリアを究めた40代後半の女性5人と食事をしていたときに、ふと気付いたことがあったそうです。

 「5人のうち4人までが、夫(パートナー)を経済的に支えていた時期があったのです。一人の女性は、大学院生の夫を扶養家族にした時期がありました。別の女性は出産、復職した直後に部門長に抜てきされて両立に悩んだら、夫がフリーランスになって子育てをしてくれた。私自身も、夫が地方で就職していて、学校経営のために私がそちらへ移ることができなかったため、夫が退職してこちらへ来てくれました。その後、夫が資格を取るために大学院に行ったときは私が彼を支えました」

 女性がステップアップする際には男性が支援して、一段落したら今度は女性が男性のキャリアを支援する。一人でキャリアを作っていくのではなく、支え合って交代でキャリアを築いていくという道もあるのですね。

 「そのためにもパートナー選びはとても重要。対等に互いの仕事や人生を尊重し合うことが一番大事かなと思います」

 漆さんは卒業生に「恋愛の段階で『家訓』を作りなさい」とアドバイスするそうです。「恋愛感情だけで結婚してしまって出産や育児に対するビジョンが違っていると、女性に余計に負担が掛かってきます。生まれ育った環境の価値観はそれぞれ違うので、結婚後、特に子育てに関してぶつかり合うことが多い。お互いが共通して大事にできる価値観を、結婚前に確認しておきましょう」