コロナ禍でキャリアに不安を覚えたり、気持ちが晴れない人も多いはず。 そんな焦りや不安にどう対処すればいいか専門家や経験者に話を聞きました。

緊急事態宣言の解除以降、段階的に社会・経済活動が再開し始めた。私たちはwithコロナの時代に対応した新たな働き方や生活様式を取り入れながら、徐々に日常を取り戻しつつある。一方で、再び感染が拡大する第2波、第3波の可能性も予断を許さない状況だ。doors世代は、感染リスクに対して、何に気をつけて過ごせばよいのか。東京歯科大学市川総合病院 呼吸器内科教授で日本感染症学会専門医の寺嶋毅さんから、感染予防の基礎知識と日常行動で気をつけるべきポイントについて話を聞いた。

予防の基本を押さえ、過度な不安を緩和

 「コロナウイルスは、主に鳥や哺乳類に感染するウイルスの一種。顕微鏡で見ると表面に王冠のような形の突起が見えることから、『コロナ』(ギリシャ語で王冠を意味する)と名づけられたと言われています」と解説する寺嶋毅さん。50種類以上あるコロナウイルスの中でも、人間に感染するものは今回の新型コロナウイルスを含めて7種類。そのうち「ヒトコロナウイルス」が原因とされる4種類は、一般的には感染すると「風邪」と診断される軽い症状なのだとか。一方、以前流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)、今回の新型コロナウイルスの3種類は、感染・発症すると重度の肺炎を引き起こす可能性があるウイルスだ。

 「一般的な風邪やインフルエンザと同じく、新型コロナウイルスはウイルスが体内に入ることで感染します。体内への“入り口”は、主に口や鼻、目などの粘膜。手指にウイルスが付着しただけでは感染しません。感染経路として考えられるのは、例えば、感染者のせきやくしゃみなどによって飛び散ったウイルスが、直接誰かの口や目に入ること。また、感染者の手指でスイッチやドアノブなどを触ると、ウイルスが付着します。そのドアノブなどに触れた別の人の手指にウイルスが付着し、その手で粘膜に触れ体内に入ることで感染は広がっていきます。この感染経路を断つことが最も重要です」

 警戒すべきは、「飛沫感染」と「接触感染」。マスクをせずにせきをすると、しぶきが飛び散る距離は2mともいわれている。

 「政府による指針でもありますが、『身体的距離2m以上の確保』『マスクの着用』『手洗い』『3密(密集、密接、密閉)を避ける』が予防の基本。ウイルス単体では長い時間生きられませんが、金属やプラスチックなどのつるつるとした素材では、感染性を持ちながら2~3日ウイルスが付着している可能性があります。オフィスのエレベーターのボタンやエスカレーターの手すり、通勤電車のつり革など、不特定多数が触れる場所は特に注意が必要です」

 「外出をするときは、アルコール消毒液のミニボトルを携帯するといいでしょう。生活上、すべてを遮断することは難しいので『感染者が触ったかもしれない』というリスクのあるものに触れた後は、その都度手を消毒することを習慣づけたいですね

外出時は、アルコール消毒液のミニボトルを持って手を消毒(写真はイメージ)
外出時は、アルコール消毒液のミニボトルを持って手を消毒(写真はイメージ)
<大勢が触れる場所の一例>
照明スイッチ/手すり/エレベーターのボタン/ドアノブ/トイレの便座・水洗ボタン・水道の蛇口/会議室のマイク/食堂の食券販売機のボタン

 「緊急事態宣言の後、皆さんの努力と辛抱のおかげで感染者数はピーク時よりもかなり減ってきています。ただし、リスクはゼロにはなりません。今後の推移は、これからどこまで皆さんが慎重な姿勢を取れるのか、あるいは、気が緩んでしまうかという要素に左右される部分が大きい。判断は非常に難しいところですが、外出自粛が解除された後、一斉に出かけたり予防が徹底されなかったりということがなければ、日々の増減はありつつも当面は平穏な状態が続くだろうと期待しています」

 公私共にさまざまな経験を積んで、視野や世界を広げたいdoors世代。日常生活と予防行動のメリハリは、具体的にどうすればいいのか。次からは、夏の生活シーンに合わせた感染予防対策について掘り下げていく。

<感染症専門医が指南! withコロナ2020、夏の過ごし方>●日常生活で気をつけること/→家の外での○○の場面でガードを緩めない/●恋人とはどのような距離で付き合えばいい?/→より○○に近い形であれば、○○に準じた接し方を目安に/●海やプールは入っても大丈夫?/→海やプールの(水)からうつるリスクは○○/→○○や○○、○○での感染は要注意/●冷却マスクや夏仕様の布マスクは、感染予防になる?/→不織布マスクに比べると○○は低いが、○○を防ぐ点では効果的