最近耳にする「STEM」とは、「科学、技術、工学、数学」の分野を基にした思考やスキルのこと。AI社会を生き抜くカギと目されます。STEM人材として活躍する女性たちから「STEM的思考法」のヒントを学びます。

「STEM的」な考え方を身に付けて仕事に生かす本特集の実践編。元会社員が、自分の「不便」「困った」を課題として捉えたときに、まったく新たな価値を持った製品が生まれました。自分に足りないところを補うパートナーとタッグを組んで、一緒に製品化にまい進した女性の考え方をたどります。

 ウエアラブルな体温計と健康管理アプリを企画・開発するHERBIOのCEO(最高経営責任者)を務める田中彩諭理さんは、女性特有の課題を先端技術で解決するため、同社を2017年に立ち上げました。「この体温計を世に出すことが人生の最大目的」と熱く語る田中さんは、実は4年ほど前までは起業など全然考えていなかった「普通」の会社員でした。

 STEMとは縁遠かった田中さんを、いったい何がテクノロジー起業家の道に向かわせたのでしょうか。そして田中さんはどうやって最先端の技術を使った医療機器を作り上げることができたのでしょうか。

 第1章・課題発見から解決まで「科学的な思考」を身に付ける で紹介したSTEM思考で重要な最初のステップは「課題発見」。田中さんの場合、この課題発見の裏側には、田中さん自身が感じていた不便な経験がありました。

 田中さんの強みは、この「課題発見力」。田中さんの思考と行動を通して、どうすれば課題をうまく発見できるのか、そしてそれをどう行動に移していけばいいのか、STEM思考の実践方法を学びましょう。

HERBIOのCEOの田中彩諭理さん(右)と共同創業者の丸井朱里さん。2017年9月、HERBIOを共同で設立
HERBIOのCEOの田中彩諭理さん(右)と共同創業者の丸井朱里さん。2017年9月、HERBIOを共同で設立
田中さんの「課題発見 → 手順・実行 → 解決・新たな課題発見」のプロセス。自分が不便だと思う身近なことが課題発見の入り口だった
田中さんの「課題発見 → 手順・実行 → 解決・新たな課題発見」のプロセス。自分が不便だと思う身近なことが課題発見の入り口だった