コロナによって世の中が大きく変わり、求められるスキルも様変わりしている。これまで誰も経験したことがないwithコロナ時代を生き抜くために必要なスキルを各界のリーダーたちに聞いた。

働き方や生活、人とのコミュニケーションにおいて、誰もが少なからず価値観を揺るがされたコロナ禍。コロナ時代、変化を受け入れ、新しいスタイルに適応して強く生き抜くために、私たちはどんなスキルを身に付ければいいのだろうか。大学在学中から広告やプロデュース業で活躍し、現在はarca(アルカ)のCEO、また女性のエンパワメントをテーマとしたプロジェクト「Ladyknows」の代表も務めるクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんに、今思うことを聞いた。

社会ってそんなすぐに変わるわけじゃない

 日本で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した3月末、辻愛沙子さんが感じていたのは無力感だったという。「私たちはベンチャー企業なので、変化に順応することは意外と慣れていますし、テレワークは効率やスケジュールの面でメリットを感じることもありました。でも、事業会社のように自社プロダクトを持っていないこともあって、何かしたいときにすぐに実行に移せることがなかなか難しい事業形態なんですよね。困っている人がたくさんいる中で何もできないことが、すごくもどかしかったです」と辻さんは振り返る。

3月末、何もできなかった自分に対して「なんて無力なんだろう」と落ち込んだこともあったという辻愛沙子さん
3月末、何もできなかった自分に対して「なんて無力なんだろう」と落ち込んだこともあったという辻愛沙子さん

 ただ、当時から今に至るまで、1週間単位でマインドセットが変化しているという。ニュースで状況をウォッチする中で、一人ひとりの努力で少しずつ社会が変わっていくさまを目の当たりにし、「社会って、一気に崩れたり、一気に前進したりすることばかりではない。ニューノーマルという言葉もありますが、突然社会が新しいものになるのではなく、1日1日の積み重ねで少しずつ新しい日常が出来上がっていくものだと強く感じました」

 「焦ってすぐに走り出すことは危険。例えば、医療現場が大変なタイミングで、クラウドファンディングで資金を集めて感染症指定医療機関の近くの広告枠に応援メッセージを出すこともできたと思います。でも、当時はマスクや防護服などの医療物資すら届いていなかった。感情的に動くのではなくて、立ち止まって本当に必要なものを考えて、サスティナブルにサポートし合える座組を作るべきだと考えました

 長期的な視点を手に入れた一方で、自分の意思決定のもとですぐに動かせるビジネスも必要だと認識。自社プロダクトの開発など、コロナ時代における新しい働き方を作るために、辻さんは動き始めている。

 次ページから辻さんが考えるコロナ禍を生き抜くためのスキルについて紹介する。

<辻愛沙子さんが考えるwithコロナ時代を生き抜くためのスキル>1 内省して○○を明確化しつつ、アウトプットの形は複数持っておく/2 ○○を隠さず、意思を共にしてくれる応援者や同志を増やす/3 ○○の考え方ではなくて、少しずつ何かをして学んでいく