転職ノウハウは世にたくさんあるけれど、今いる会社で市場価値を高める方法は、意外と共有されていない。異動したいとき、評価を上げたいとき、実績を作りたいとき、メンターが欲しいとき‥‥これからのキャリアにつなげるために何ができるのか。今いる会社でできるキャリアの戦略の立て方を探ります。

 自分の経験を生かして、転職を繰り返すことで、キャリアは強くなり、市場価値は上がっていく――そんなイメージを持っている人はたくさんいるのでは? 中には、「転職を一度も経験していないことが、コンプレックスだ」という読者もいる。でも……本当に、そうなのだろうか?

 「1周回って、転職をしない人の価値が高まる時代が来るのではないかと思っています」と話すのは、野村総合研究所、リクルート、グリー、日本IBMなど、10年間の中で7回転職を経験し、現在は、新規サービス開発や事業提携などのコンサルティングを行いながら、プライベートで若手のキャリア育成に携わり続けている村井庸介さん。

転職経験だけでは市場価値は高まらない

 「これだけ世の中の流れが大きく速く変わる今、価値もどんどん変わっていく。30代前後のワーキングパーソンの転職相談に乗ることもありますが、結構『焦って転職しなくていい』と伝えることも多いんですよ。

 転職がカジュアルになった今、転職を繰り返す人の希少性は薄れています。スタートアップ企業も増える中で、大きな組織に身を置き、一社に長くいることで見える景色や、組織ルールを守りながら新しい価値を生み出す経験は、これから価値が高まるのではないかと思うんです」

 ただ、変化を恐れて『今の状態が続く』ことを願い、今の組織に居座っているだけでは、変化し続ける社会で取り残されることは確か、とも指摘する。doors読者の20~30代も、そうした焦りを実感として持っているはず。

 「転職経験自体が、その人の市場価値を上げるわけではありません。市場価値が上がる人で評価されているのは、『どこの会社にいた』ではなく、『どんな修羅場を乗り越えたか』『どんな状況でどんな結果を出してきたか』。転職するのも、組織にいるのもメリット・デメリットがそれぞれあるんです。そこを見極めて、組織の中で自分に合うキャリア戦略を、自分自身で考えて行動する。そうすれば、結果的に市場価値は上げられると思います」

 次ページからは、今の会社にいながら自分の価値を高めるポイントを一つずつ解説。今の会社にいる自分を肯定でき、強いキャリアに必要なプロセスが見えてくる。