転職ノウハウは世にたくさんあるけれど、今いる会社で市場価値を高める方法は、意外と共有されていない。異動したいとき、評価を上げたいとき、実績を作りたいとき、メンターが欲しいとき‥‥これからのキャリアにつなげるために何ができるのか。今いる会社でできるキャリアの戦略の立て方を探ります。

「本当に今の会社で働き続けるべき?」「キャリアアップと出産・育児のタイミング、どう考えたらいい?」…。悩みにぶつかったとき、頼りになるのがメンターの存在だ。法人向けに社外メンターのマッチングサービスなどを展開する「Mentor For」代表の池原真佐子さんに、メンターとの出会い方、関係づくりのコツについて聞いた。

「メンター」って何?

 「メンター」という言葉自体はよく聞くが、「そもそもどういう存在?」「コーチングやキャリアカウンセリングとは違うの?」といった疑問を持つ人も多いのではないだろうか。池原さんによれば、メンターとは次のような存在だ。

メンターとは…

人生の少し先を行く先輩
人生やキャリアの悩みに対して、経験をもとに助言して導いてくれる

 「コーチングは、専門のスキルを持ったコーチによる対話の技法です。相談者の中にあるモヤモヤを言語化したり、相談者自身が自分の可能性を見いだしたりすることをサポートします。あくまで手助けをする存在で、『こうしたらどうか』といった助言は基本的にしません」

 「キャリアカウンセリングには、転職エージェントが求人紹介の前提として実施するものも含め、さまざまな形態があります。こちらも多くの場合、課題を掘り下げた上で多様な選択肢を提示したり、助言をしたりするより、転職などを念頭に、必要に応じた情報を提供することが多いのではないでしょうか。自分自身が経験してきた失敗や成功、そしてそこから得た知恵をもとに、ときには改善点を指摘したり、助言をしたりして、その人らしいキャリアが描けるよう支援する役割を果たせるのが、メンターだと考えています」

池原真佐子/Mentor For 代表、一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会代表理事
池原真佐子/Mentor For 代表、一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会代表理事
早稲田大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修了。PR会社、教育関係のNPOを経て、コンサルティング会社で人材開発に従事。経営大学院INSEADでコーチングの修士(Executive Master in Consulting and Coaching for Change/現在はEMCに改称)を取得、2014年MANABICIA(現Mentor For)を設立。女性を初めとした多様な人材が活躍する組織づくりのため、18年から社外メンターの育成・マッチング事業を開始・展開している。

ライフイベントに左右されやすい女性のキャリア

 池原さん自身、これまでのキャリアでメンターに助けられた経験が何度もある。例えば、起業して間もなく妊娠したころのこと。臨月で夫の海外赴任が決まった。産後はワンオペで育児をしながら事業を続けようと考えていたが、クライアントを不安にさせたくないという思いから、妊娠について公表できずにいたという。

 「そんなとき、妊娠を知っていたある知人から『自分の弱みをきちんと見せられるようにならないとパンクするよ。顧客を不安にさせないようにするにはこんな方法がある』と具体的に助言してもらいました。そのおかげで、困ったときは周囲に相談できる体制をあらかじめ整えられたんです。メンターは、メンティー(相談者)との信頼関係を前提に、ときには厳しい指摘もしてくれる存在です」

 「出産するか、しないか」「安心して働き続けられるようにするには、どんな配偶者を選べばよいか」――。ジェンダーギャップの是正が道半ばの日本において、女性のキャリアは、ライフイベントによる影響を受けやすいのが現状だ。壁にぶつかって悩んだとき、「人生の先輩」であるメンターは心強い支えになる。

池原さんが伝授するメンターづくりの極意とは? この後、詳しく解説していきます!
池原さんが伝授するメンターづくりの極意とは? この後、詳しく解説していきます!