一つの仕事だけでは、時に不安定な状況へと陥りかねないwithコロナ時代。未来の選択肢を広げる鍵となるのがパラレルワークの働き方だ。ITエンジニアの本業を軸に、漫画家や専門職大学の客員教授としての顔も持つ千代田まどかさん。学生時代に身に付けた英語力に加え、「テクノロジー×漫画」という異色の組み合わせで唯一無二の存在感を放つ。Twitterフォロワー数は現在7万8000人超。「ちょまどさん」の名で広く知られる千代田さんだが、過去には職場とのミスマッチや文系大学出身エンジニアというコンプレックスに悩んだ経験も。変化を恐れず、自分らしい働き方を軽やかに楽しむ千代田さんに、パラレルワーク成功の秘訣を聞いた。

熱中してきたことが、複数の仕事につながった

 大手外資系IT企業のITエンジニアとして、現在、社外のエンジニア(開発者)と自社をつなぐCloud Developer Advocate(クラウド・デベロッパー・アドボケイト)職を担うちょまどさん。世界各国で200人程度といわれる同職に、日本人は2人。米国本社所属の多国籍チームの中で、日本のチームメンバーとも連携しながら働いている。主な仕事内容は、SNS を通じてエンジニアに広く情報を届けたり、国内外のIT 関連イベントで登壇したりするほか、ITエンジニアとしてソフトウエアのドキュメントを書いたり、プログラミングをしたりと幅広い。

 「アメリカ人上司からは、『開発者の方々から “ブラザー” と呼ばれるような存在になってください』『壇上から降りて開発者の皆さんの輪の中に入って仲間になってください』と言われています。開発者の方々に近い立ち位置から交流を深めて自社製品の魅力を知ってもらい、皆さんの声を本社に届けて製品の開発・向上につなげることが私の役割。プロ意識の高い開発者の方々と同じ土俵で会話をするためには、私自身が製品の一番のファンであり、技術者であり続ける必要があります。魅力を発信するのと同時に、知識やスキルを深めてアップデートし続けることを大切にしています

ITエンジニア兼漫画家として、多方面で活躍するちょまどさん
ITエンジニア兼漫画家として、多方面で活躍するちょまどさん

 一方で、自らを「オタク」と称する熱中力により、好きが高じて漫画家、牛めし店「松屋」のInstagramモデルといった異業種の副業にもチャレンジ。今年4月からは情報経営イノベーション専門職大学(iU)の客員教授に就任し、活躍の幅がますます広がっている。

 「その時々で好きなことを一生懸命にやってきただけで、パラレルワークの働き方を自分がするようになるとは全く予想していませんでした。でも、熱中してきたことが結果的に複数の仕事へとつながり、自分の強みになっています」と振り返るように、過去に打ち込んできた趣味や経験がチャンスを呼び、複合的に影響し合いながらキャリアアップに結び付いていることが分かる。

ちょまどさんの趣味・キャリア相関図

 コロナ禍以降もテレワーク中心の働き方をしながら、オンライン登壇を週に3~5回こなすなどスケジュールはぎっしり。プログラミングの技術を学ぶ時間を取るため、就寝時間が明け方近くになってしまうこともあるとちょまどさんは言う。

 「本業と副業の比率は、8対2くらい。フレキシブルな働き方ができる環境なので、本業と副業に取り組む時間を両方ちゃんと取れる感じです 。今はさまざまな経験をして自分の世界を広げたいですし、楽しそう! と思ったことは、所属する組織に迷惑をかけない限りはまずやってみることにしています。どれも好きで取り組んでいるのでつらくはないけれど、パラレルワークをする上で大変さを感じるのは、ITエンジニアとしての技術力向上と情報のキャッチアップ。時間は有限なので、仕事が忙しいときにはインプットの時間を確保するために睡眠時間がどんどん減っていくというのはありますね」

 「本社のミーティングに参加するときの時差があるので、もともと夜型ですが、今は深夜の時間帯によく勉強をしています。疲れを感じたときは、休日に時間を気にせず好きなゲームの世界に没頭したり、半日近く睡眠時間を取ったり。心身共にゆっくりと休息を取るようにしてコンディションを保っています」

 大きな組織に所属しながら、複数の副業をこなす先進的な働き方で、ミステリアスな雰囲気にも包まれたちょまどさんの素顔。今回の取材を通じて、信じる道を突き進む芯の強さとポジティブさを感じつつ、「実は人見知り」という繊細さと好きな世界に対するひたむきな情熱が印象的だった。

 次のページからは、パラレルワークの魅力と趣味が仕事になった転機、ロールモデルのいない働き方の壁を乗り越えた経験についてさらに聞いていく。

<Works>1 外資系大手IT企業のアドボケイト・ITエンジニア/2 漫画家/3 専門職大学の客員教授<パラレルワークのMyルール>■ 周囲の意見は参考程度に。○○と○○を諦めない/■ 3つの離れた点はつなぐと面になる。○○ことを心掛ける/■ ○○に広く積極的に関わってみる/■ 他人と比べず、○○に集中する/■ 活動する中で、個人だけでなく○○視点を忘れない/■ ロールモデルが周りにいなくても、○○をつくり近づいていく/■ ○○もとても大切
過去に打ち込んだ経験を、パラレルワークの働き方で着実にキャリアアップにつなげているちょまどさん