限られた時間でリターンを最大化するために問われるのがタイパ(タイムパフォーマンス)力です。タイパ力を鍛えれば、やるべきことは効率的に短時間で終わらすことができ、自分の好きなことに時間を割くことができます。そこで、タイパ力の達人のノウハウや専門家の知見をご紹介します。

日々増え続ける業務タスク、蓄積していく雑務……。それらを一つでも早く終わらせるために、あれやこれやと「時短術」を取り入れていませんか? 800社以上の企業で「社内で成果を出し、人事評価の高い人たち」を徹底的に分析したクロスリバー代表の越川慎司さんは、「彼らが限られた時間で成果を出すために実践していたのは、『時短術』ではなく『時間術』」だと言います。常にタイムパフォーマンスを意識している人たちが実践していたものは何なのか、詳しく聞きました。

目指すのは「時短術」ではなく「時間術」

 越川さんは、のべ17万人のビジネスパーソン中から、人事評価の高い「トップ5%社員」たちの言動を調査。彼らがどのような行動、思考で仕事に取り組んでいるかの共通点と、そのほかの「95%社員」との差を分析しています。

 そこで見えてきたのが、「トップ5%社員たちは、『時短術』ではなく『時間術』を意識している」こと。それはキャリアや雇用形態を問わずに共通していたそう。

 「例えば、たくさんの業務を抱えているあなたが、上司から急ぎの仕事を依頼されたとします。そのとき『この作業は3時間くらいかかりそうだから、もっと早くできるように工夫しよう』と、時短を目指してはいませんか。僕もかつてはその一人。パソコンのショートカットキーを長時間かけて覚えたこともありました」

 一方、トップ5%社員たちは「そもそも、この業務は何のために必要なの?」と考えるところから入っていました。

 「登山に例えるなら、『登るべき山は、これで合っている?』と、まずは目標を確認する。初めに『依頼してきた上司の意図は?』『どうすれば、顧客の望むものを作れるか?』と考え、そのあとに最短ルートで登るための時短術を取り入れているのです。

 最初から時短を目指す人は、『登るべき山を確認せずに最短ルートで登ろうとしている』のと同じ。依頼されてすぐに『この資料ならPowerPointで作ると早いな』など、時短術(手段)に気を取られてしまう。起点が違うんですね」

 トップ5%社員たちは、限られた時間でどのように成果を出しているのでしょうか。彼らが日頃行っていたことを、徹底解析。すると意外なことに、今すぐ取り入れられるものばかりでした。