環境が変わったり、思いもよらない壁が立ちはだかったりしたときにどう状況をとらえて、乗り越えていけばいいのか。予想外の困難を克服し、成果を出す秘訣をさまざまな業界で働く女性たちの実例から探ります。

コロナ禍で逆境に追い込まれた職種の1つが、営業職。「営業とは足で稼ぐもの」などという言葉もある通り、フェース・トゥー・フェースで顧客との信頼関係をつくることを重視してきた企業は多い。訪問ができない中で、どう成果を上げればいいのか。独自の工夫で窮地を乗り越えた20代のケースから考える。

転職して約半年でコロナ禍に直面

 PR会社ビルコムに勤める、小形麻里加さん。大手・中堅企業の広報・PR担当者向けに、自社が開発したクラウド型ソフトウエアの営業をしている。ソフトは、各企業が新聞や雑誌、テレビ、ウェブメディアなどにどれだけ露出し、その効果がどれくらい上がっているのかを自動で測定するもの。

 ホームページなどを通じて問い合わせがあった顧客を中心に、まずは電話などで簡単にヒアリングし、客先まで足を運んで詳しい説明を重ねるのが、新型コロナウイルス感染拡大以前の業務の流れだった。

 継続して活用されることに意味があるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス=インターネット経由でソフトウエアを提供するサービス)であるため、導入の意義やサービス内容についてはとりわけ丁寧に説明する必要がある。その特性上、導入・利用に至るまでの顧客の意思決定にも時間を要する傾向にあった。

 異業種・異職種から、2019年9月に転職してきた小形さん。コロナ禍に直面させられたのは、そんな営業職の厳しさにやっと慣れてきたころだった。

 「入社して3カ月ほどは先輩の営業に同行していて、独り立ちしたのが今年初め。2カ月ほどたって、自信が持ててきたタイミングでコロナ禍に。正直戸惑いました」

独り立ちして間もないタイミングで、コロナ禍に直面したと語る小形さん
独り立ちして間もないタイミングで、コロナ禍に直面したと語る小形さん

 経済不安の高まりからか、問い合わせ数は減少。3月下旬ごろからは「感染防止対策で在宅勤務に切り替えているので、訪問営業には対応できない」という企業がほとんどだったという。

 他の多くの職種と同様に、やむを得ず強いられることになったのは、対面からオンラインへの切り替えだった。「足で稼ぐ」が鉄則の営業が、オンラインでどう成果を上げるのか――。客観的に見ればピンチだが、小形さんは独自の工夫をした結果、コロナ禍以前より短い日数で、月間の目標件数の1.3倍の成約を獲得することに成功した(獲得件数は7月のデータ)。

 「営業経験が浅かったゆえに、訪問しなければ成果を上げられないという思い込みもなかった」と振り返る小形さん。その柔軟な発想で、何を変えたのだろうか。