「本格的に転職を考え始めました」

 「今、まさに転職活動中です」

 日経doors編集部が取材で出会う読者に近況を聞くと、転職熱が高まっているのを実感する。実際に、今、転職市場でも、転職を希望するdoors世代が増えているようだ。

 パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下だった2020年4月~5月は転職希望者数が落ち込んでいたが、2020年7月からその数は増加。前年(2019年7月)と比べると105.7%となっている。

転職希望者の価値観も変化

 doda編集長の喜多恭子さんによると「転職希望者というよりも、まずはキャリア相談をしたいという会員登録が増えた実感がある」という。20代会社員の登録者が9割を超える転職サイト「キャリトレ」でも、「春先は新規登録者が減ったものの、夏以降は求職者の動きが求人より先に戻り、新規登録者の数が増加した」(ビズリーチ キャリトレ事業部 カスタマー企画グループ MGR野村吉貴さん)。

 また、転職希望者の価値観の変化も大きいようだ。

 「転職先の条件として入力される検索のフリーワードにも、変化が起きています。これまでは『在宅勤務』や『テレワーク』といった言葉は100位以内にランクインするかしないかでしたが、コロナ後は『在宅勤務』が2位に、『リモートワーク』が37位となり、新しい働き方への関心が高まっています。コロナ後に出社スタイルに戻って不満を持っている人ももちろんいますが、そもそも新しい働き方が当たり前のものとして定着し、一つの必須条件となっていると考えられます」(doda編集長 喜多恭子さん)

 では、なぜ、転職熱が高まっているのだろうか。

会社に縛られている人と縛られない人の差

 転職活動を支援する「POSIWILLCAREER」では、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)以上の大学を卒業した大手企業に勤めている20~30代の登録が多い。

 「今まで勉強も部活も頑張ってきたような真面目な層は、終身雇用の概念が崩れた社会で、『このままじゃダメかも』という漠然とした不安やモヤモヤを抱えていました。そこに、新型コロナウイルスによる世界の変化(働き方の変化)が加わって、会社に縛られている人と縛られない人の差が顕在化し、『この先、どうなるか分からない』という不安がより一層大きくなったんです」(ポジウィル代表 金井芽衣さん)

「私のバリューって何?」自分の市場価値に向き合わざるを得なくなった2020年
「私のバリューって何?」自分の市場価値に向き合わざるを得なくなった2020年

 「目の前のことにただがむしゃらに取り組むのではなく、長期的な視点で『どう生きるのか』『どう働くのか』『個人としての価値は何なのか』を、若いうちから真剣に自分事として考えるようになったのだと思います」(金井さん)

 一方、市場は売り手市場から買い手市場に一変。しかも、20代にとってはやや厳しい状況にもなっているという。

 次ページでは、転職市場の動向とともに、狙い目の業界や、どんな人が求められているのか、20代のdoors世代が転職活動をする際にどんなことを意識すればいいのかについて、詳しく解説していく。