社会に出て、母との関係に違和感を抱くようになった人は少なくない。一方で、自分の価値観が母の影響を受けているという人は8割以上も。専門家や経験者の声をもとに「doors世代のこれからの母との関係」を探っていく。

普段はうまくいっていても、ふとした瞬間にあつれきが生じがちな母娘関係。生きやすい人間関係をつくる「メンタルアップマネージャ」として、働く女性へのカウンセリングなどを提供している大野萌子さんに、母親の性質が悪いほうに働いてしまうときの「傾向と対策」を聞いた。

「娘は娘」と割り切れない

 お互いに愛情はあるのに、なぜかぶつかってしまう――。母娘関係がそんな状態に陥ってしまうのには、共通する理由があると大野さんは語る。前提として存在するのが世代間のギャップだ。

 「20~30代女性の母親というと、世代は50代以上が中心。今は結婚や出産を経ても働き続けるのが当たり前になってきましたが、母親世代は『仕事を辞めて家庭に入ること』が主流の時代を生きてきた。価値観が変化していることを頭では理解していても、『自分は自分、娘は娘』と割り切れていない母親は多いように思います。また、『1つの企業に勤め続けるのが普通』という考え方も強い。働く女性のカウンセリングをしていると、『キャリアアップのために転職を決めて報告したら、根性がないと批判された』といった話を耳にすることも多いです」(大野さん)

 ただ、価値観の違いがあることが不和に直結するわけではない。問題の背景には、「支配する母親」と「支配される子ども」という立場が固定化してしまう「共依存」関係が存在していることがほとんどだという。

 「子どもの頃は一人では分からないこと、できないことだらけ。だから母親が導いてあげる場面が多くなるのは当然なのです。ただ、この関係は母親に対して、『言うことを必ず聞いてくれる相手がいる』という感覚を与えることにもつながります。それ自体は一概に悪いこととはいえませんが、娘が自立する年齢になってもその意識から抜け出せないのはまずい。娘のほうも『お母さんに悲しい思いをさせたくない』といった気遣いから、進んでその関係性を強化してしまっている場合があります」(大野さん)

 人間関係は「相互的なもの」と大野さんは言う。つまり、もし今、母親との付き合い方に悩むことがあるなら、娘の側からその関係性を変化させていくこともできるということ。

 2ページ目からは、困った母親のタイプを4つに分けてその特徴を説明した上で、娘にできる関係改善の方法を解説していく。以下に挙げたうち、自身の母親に当てはまる項目が多いのはどれだろうか。

2ページ目以降で、各タイプの解説をチェック!
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 その人の性質が「どう働くか」は環境などに左右される部分も大きいため、上記の特徴を持った人が「常に困った母親になる」という意味ではない。「共依存」関係が成立してしまった場合、どのような形で娘に悪影響を及ぼしやすいのかという傾向を示したものとして理解してほしい。また、一人が複数のタイプの特徴を兼ね備える場合もある。診断結果はあくまで参考としよう。