社会に出て、母との関係に違和感を抱くようになった人は少なくない。一方で、自分の価値観が母の影響を受けているという人は8割以上も。専門家や経験者の声をもとに「doors世代のこれからの母との関係」を探っていく。

おおたわ史絵さんとトイアンナさんによる「母との関係」対談。下編では、doors世代が感じるモヤモヤの正体や、母と心地よい関係を築くための適切な距離感、幸せの感じ方について語ってもらいました。

誰もが母の影響を受けている

日経doors編集部(以下、――) おおたわさんは、ご自身の治療の一環で、自助グループや家族会に参加されていましたが、やはりこの悩みを解決するには有識者を頼ることが一番なんでしょうか。

おおたわ史絵さん(以下、敬称略) 有識者でなくてはならないわけではないのですが、自助グループや家族会は、人を非難してはいけないというルールやマナーが大前提にあります。自分の経験と気持ちを吐露して、聞き手は最後に「〇〇さん、ありがとう」と言う。話者に対して意見するのはNGなんですね。議論の場ではないから物足りないかもしれないけれど、それが結果的にうまくいくんです。

「ただ、共感がない場では、無理に気持ちを共有する必要はないと思います」
「ただ、共感がない場では、無理に気持ちを共有する必要はないと思います」

トイアンナさん(以下、敬称略) 私は「魔女のサバト」という婚活サロンを運営しているのですが、そこも「自分の経験を話すのはいいけど、人の論評をしない」というスタンスを取っています。

 「どんな人が自分に合っているんだろう」とか「どうすれば結婚できるんだろう」とか、婚活迷子になっている人と話していて感じるのは、婚活の相談って母娘の悩みに直結しているということ。「こんな人が理想」だと抱いているものが、もはや自分の要望なのか、母親の要望なのかが判断つかなくなっている人も多いですね。

おおたわ 結婚観や人生観が、母の影響を受けていると感じる人はたくさんいると思います。実は、医学的にも、食の好みや体質は、母親に8割方似るといわれています。例えば、ミトコンドリアDNAは母親のものしか子どもに遺伝しないんです。

母と似ている部分をどう考えるか

 母親の影響って、拭い去れない宿命的なものもあるんですよね。ただ、自分の半分は母親からできていると考えると「自分って一体何なんだろう、母親に翻弄されているだけじゃないか」と思うかもしれませんが、結局は、人って、自分の中にある母親に似た部分を否定したり隠したり、封印したり、たまに出してみたりしながら、生きているものなんだな、と思いますよ。

トイ 母に似ている部分って、自分でもイヤだなって思うかもしれないけど、否定し続けていると、そのまま自分のことを好きになれないと思うんです。