年末年始に読んでおきたい「お薦めの本」を紹介する特集。今回は、日経doors編集部員がdoors世代の頃に読み、人生が変わったという一冊を紹介します。

20代、駆け出しエディターの頃に出会った

日経doors編集長・羽生祥子の人生を変えた本は、

『情報の歴史』
(監修/松岡正剛、構成/編集工学研究所、NTT出版)

 事実というのは、ある一つの確固たるものとしてそこにデン、と居座っていて、それを客観的に正しく描写することが「情報」で、その情報を理路整然と並べるひとびとが「編集者」だ、という考え方が一瞬で破壊された一冊。私はこの本と、編集工学研究所で駆け出しエディターとして働いていた頃に出合った。

 ふつう、歴史といえば日本史と世界史という二分類の別軸があって、大抵の場合は教科書も別冊になっている。そして各年表には、政治・経済・科学・文化などとカテゴリーが毅然と存在していて、その箱の中に分類されながら歴史が紹介されてゆく。そんな既成の軸やカテゴリー分類が、この『情報の歴史』では一切出てこない。西洋も東洋も、経済も技術も、ソフトもハードも、繁栄も失望も、すべてが松岡正剛という知のモンスターによって編み直される。

紀元前500万年前の猿人誕生から1994年のインターネット日本本格上陸までの膨大な歴史が、400ページ以上にわたる緻密な年表でつづられている。
紀元前500万年前の猿人誕生から1994年のインターネット日本本格上陸までの膨大な歴史が、400ページ以上にわたる緻密な年表でつづられている。