コロナ禍も3年目へ。さまざまな制限が課される中でも、着実に夢を形にしていった人がいます。くじけそうになる心を抱え、どう夢の実現に動いたのか。さまざまな登場人物から、目標を達成させるための至極のノウハウをご紹介します。

 コロナ禍は、私たちの生活様式を大きく変えました。仕事や環境を変えざるを得なかった人たちも大勢います。しかしその状況でも決してひるまず、むしろバネにして新たなる道を切り開いた人もいました。

 今回話を聞いたのは、「Menary (メナリー)」を立ち上げた木住野舞(きしのまい)さん。

木住野舞さん
木住野舞さん
Menary代表。1989年、東京都生まれ。大学卒業後、国内大手ホテルに就職。その後シンガポールの外資系で3年間勤務する。身近なものを通じて、「エシカル消費と女性の社会的自立を応援し、人と地球が共生できる持続可能な世界を作りたい」という思いから、2021年にエシカルブランド「Menary」を立ち上げる

 「Menary」は、「エシカル×エンパワーメント」をコンセプトに、「環境・社会への貢献」と「女性本来の美しさ」を目指すブランド。2021年には「エシカルリップBENI」を発売しました。しかし、木住野さんはもともとシンガポールのホテルに勤務し、化粧品業界とは縁がなかったそう。しかもコロナ禍という状況で、なぜ起業することができたのか、その背景を教えてもらいました。

英語を生かし、人と接したくてホテル業界へ

 これまで約9年間、ホテル業界で従事してきた木住野さん。大学在学中や卒業後には、海外でボランティア活動などに参加し、帰国後は「英語が好きで、人と話すことも好き。その2つを生かせるのでは」と、ホテルを就職先に選んだそう。

 東京の大手ホテルで勤務していた木住野さんに転機が訪れたのは入社5年目のとき。それは、勤務先の日本のホテルとシンガポールのホテルとで、従業員を交換派遣し合う研修が行われた際のこと。参加した木住野さんは、そのときに現地にある外資系5つ星ホテルのGM(総支配人)から「一緒に働きませんか」と、引き抜きの声がかかったのだとか。

 「それまでは、シンガポールで働くなんて考えてもみませんでした。でも、心のどこかでは『チャンスがあるならば、海外で働いてみたい』と思っていたんです」

 そして2017年、シンガポールへ。勤務先のホテルでは、宿泊客のさまざまな相談や依頼などに応対するゲストリレーションのマネージャーなどを務めるなど、新しい環境での仕事にまい進していた木住野さん。しかし、それから3年後の2020年、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るいます。シンガポールでもその影響は大きく、木住野さんの生活は一変してしまいました。

<「エシカルリップBENI」が誕生するまで>2017年 シンガポールへ。現地ホテルで勤務/2020年4月 シンガポールはロックダウン。勤務先のホテルは休業し、給料は通常の4分の1ほどに/2020年6月 日本でブランドを立ち上げようと帰国を決意/2020年7月 帰国。OEMを請け負ってくれる会社探しや、資金調達に難航/2020年8月  OEM委託先が見つかり、リップ製造へ一歩踏み出すものの、コロナ禍で製造期間が延長/2021年8月 「エシカルリップ BENI」誕生
コロナ禍で夢をかなえた人がやっていたこと<コロナ禍はいいタイミングと捉えた>自分の中に蓄積された、これまでの体験や経験を振り返り、将来を考える時間が持てた/起業に関する下調べや準備が十分にできた