「キャリアと結婚・出産、どちらを取るか」という極端な選択ではなく、等身大のスタンスで仕事と家庭の両方を充実させている人が増えています。そんな中、いまだ多くの女性が経験する「産後の壁」。キャリアコンサルタントの臼井淑子さんに、妊娠・出産後も自分らしいキャリアを築くポイントやマミートラックを回避する上司へのアピール方法など、仕事×子育ての生活を無理なく続けるコツを聞きました。

キャリアコンサルタント 臼井淑子さん
キャリアコンサルタント 臼井淑子さん
1975年生まれ。大手飲料会社を経て人材コンサルティング会社でマネジャー職を経験。35歳のときにキャリアコンサルタントとして独立。これまでに3000人以上のキャリアカウンセリングを行う。主にキャリア開発やリーダーシップ育成を専門に、企業や自治体などで研修講師として活動中。東京大学大学院 農学生命科学研究科 修士課程修了

 会社員からキャリアコンサルタントとして独立し、2児の母でもある臼井淑子さん。

 「『働きながら子どもを育てる』家庭が一般的になり、仕事と子育てをバランスよく両立する人が増えてきました。新型コロナウイルスの影響で進んだオンライン化は、育児や介護など時間的制約がある人への追い風に。私自身もオンラインで行う仕事が増えたことで時間の融通が利きやすくなったと感じています」と話します。

スーパーマザーを目指さなくてもいい

 「出産や育児は、産むタイミングはもちろん、職場や家庭の環境、子どもの個性、優先順位などによって個人差が大きいもの。キャリアの歩み方に正解はないにもかかわらず、産後もバリバリと仕事で活躍している一部の人と比べて、『私にはできない』と負い目を感じている人は多いです。

 保守的な企業風土を脱し、仕事の効率や変化への適応力が求められていく時代。マルチタスクの中で、その場に応じた柔軟な対応が鍛えられる子育て経験は、長い目で見て仕事のプラスになると私は考えています。焦らず前向きにキャリアアップしていきましょう」とエールを送る臼井さん。

 次からは、離職者の主な退職事由や近年の育休中の過ごし方などのデータを参考に、妊娠・出産後も自分らしいキャリアを築くポイントを紹介していきます。

「働く×育てる」の壁と対策まとめ<1 保活>⇒待機児童数はピークより減少傾向。妊娠中から情報収集と準備をスタート<2 時間的制約>⇒病気などによる突発時の対策は入念に。働く意味付け、人生における○○を明確にし、自分軸で○○なキャリアプランを考える<3 家事・育児の負担>⇒ 夫婦のキャリア&ライフプランを定期的に共有し、両立の壁を想定したパートナーとの連携・ルールづくり。負担を軽減するアウトソーシングも必要に応じて活用<4 マミートラック>⇒ 出産前の○○経験は宝/社内での縦・横の人間関係構築/人生の節目ごとにキャリアの棚卸し/○○を生かした柔軟な働き方や学び
妊娠・出産後も等身大でキャリアを育てていくために、押さえておくべきポイントを臼井さんが解説します ※「マミートラック」とは、育児のために仕事の制約があることから、重要で責任のある仕事を任せてもらえず、昇進や昇給のキャリアコースから外れてしまうこと