「アメーバ経営」で経費削減

大倉 決算は赤字ですが、正直なところ、このぐらいで済んでよかったとも思います。弊社では2年前から京セラ創業者の稲盛和夫氏が考案された「アメーバ経営」を取り入れています。これは組織を細分化し、現場に経営を任せる方法です。今までは食材費や人件費ぐらいしか節減できなかったのが、店長自身が水道光熱費をはじめ、いろんな店舗の勘定科目を意識するようになったので、経費節減につながりました。みんな、頑張ってくれていますね。

―― 店長が一国一城の主となり、売り上げを上げる努力をしているのですね。

大倉 はい。アメーバ経営の目的は「経営人材の育成」ですので、現場の全員が経営に参加し、採算管理に取り組んで成長していると感じます。コロナがなければ、おそらく過去最高利益で決算を迎えていたはずです。でも、そのおかげで、このぐらいの赤字で終わったのかなと。ほかの外食産業ではもっと大きな赤字になっているところもあると思います。

―― 店舗から「こんな工夫をしている」と聞くことはありますか。

大倉 会議では、エリアマネージャーが進行役になり、店長が自分の店舗について、「売上最大についてはこんな工夫をしている」「経費最少にするにはこうした取り組みをしている」と発表します。ほかの店長の発表で「電気代がすごく下がった」と聞くと、「なぜそんなに下げられたのですか」と、ほかの店長が質問して、採算管理について共有します。

―― 面白いですね。だから、社員が独立して開業する「鳥貴族 大倉家」のような新しい形態にもチャレンジできるんですね。

原点に戻ることを意識

大倉 大倉家は創業35周年の記念事業として、原点に戻ることを意識しました。私が35年前に始めた鳥貴族1号店が10坪ぐらいでしたから、当時の原点に戻り、小型店舗業態とです。社員にとっては独立に向いた投資額や規模でしたし、「自分は一生、現場でやりたいんです」という社員も多かったので開発しました。おのおので採算管理をし、自分が経営者となっても利益を残せるような運営ができていると思います。

―― 今後は新業態や大倉家のような店舗が広まりそうですね。

大倉 コロナの影響でテレワークが進み、今後は出店先が従来のオフィス街や繁華街から、住宅街へシフトしていくかもしれません。そして、よりお客さまとの距離が近いお店が支持されるのではないかと。今は三密を避けなくてはいけませんが、反動は絶対に来ると思うんですね。直接会うということの価値が高まっていると思います。

 休業要請が終わったときも、「人と直接会いたい」「オンラインでは感じられない対面で会うことの温かさを感じたい」という声が多かったですね。「(営業再開を)待っていたよ」と。やはり、みなさん人と会い、外で飲みたいんだなと思いました。

―― コロナ禍でも新たな業態開発と忙しく過ごしていらっしゃいました。2020年、始めたことはありますか?