文章が“ラジオ的”に
岸田 ラジオって、特に集中して聞いていなくても分かるし、自分事としてスッと心に入ってきて、つい引き込まれてしまいますよね。
たくさんの人に好まれる文章も、時代とともに変わってきています。昔は、余韻を持たせる書き方で文章に深みを出したり、あえて結論をいわなかったりすることで、読み手に想像の余地を残すなど、読者にも「行間を読む力」が求められました。でも、今はみんな長い文章を読まなくなってきているし、ながら読みも多い。ですから、私も回りくどい表現や分かりにくい言葉はできるだけ避け、どうすればダイレクトに届くのかを考えて書くようにしています。エッセーを推敲(すいこう)する時にも、細かいディテールの部分はガッツリ削ることが多いんです。
しかし、みんなに受けるものやネットでバズる文章ばかりを追求していると、作家として成長できないという危機感もあります。そうした思いから、今年はこれまでやってこなかったことに挑戦したいと思っているんです。
―― 例えばどんなことでしょうか?
取材/齋藤有美(日経doors編集部) 文/西尾英子 写真/岸田さん提供