激動の2020年、それでも活躍しつづけた人は何をやめて、何を始めていたのか。そして、新たな2021年、どんな目標や抱負を胸に抱いているのか。各界で輝く人にその心中を語ってもらいました。

コロナがさまざまな産業に暗い影を落とした2020年。サンリオピューロランドは緊急事態宣言発出前に休館を断行し、オンライングリーティングやキャラクター動画配信などで顧客を魅了しながら走り続けてきた。さまざまな施策をけん引してきたサンリオピューロランド館長で、サンリオエンターテイメント社長の小巻亜矢さんは、新たな取り組みに奔走しつつも心が折れそうな瞬間もあったそう。そんな小巻さんにやめたこと、始めたこと、今後について話を聞いた。

コロナ禍でさまざまな施策をけん引してきたサンリオピューロランドを率いた小巻亜矢さん。活躍を見せる一方で落ち込むことも多かったという
コロナ禍でさまざまな施策をけん引してきたサンリオピューロランドを率いた小巻亜矢さん。活躍を見せる一方で落ち込むことも多かったという

「いま大事なのは信用」と考え休館を決断

日経doors編集部(以下、――) テーマパーク事業はコロナの影響を大きく受けた産業の1つだと思います。昨年、サンリオピューロランド(以下、ピューロランド)はいち早く休館に踏み切りましたね。

小巻亜矢さん(以下、小巻) 私、楽観的に見えるかもしれないけど意外と悲観的なんです(笑)。「大丈夫」「いや、もっとひどくなるのでは」というせめぎ合いで、相当悩みました。2020年2月末の連休から3月の春休みにかけて企画をたくさん用意していたし、一度休館すると再開のタイミングが難しいですしね。ただ、悔しさと悲しさと不安でぐちゃぐちゃな中で、創業会長の「今、大事なのは信用だ」という一言に背中を押されました。売り上げはゼロになっても、みんなで力を合わせれば取り戻せます。でも信用を失ったらゼロどころかマイナスになり、取り戻すのは容易ではありません。わが社の企業価値を考え、取り返しのつかないことになる前に休館することを決めました。

 去年私はパーパス(存在意義)という言葉をよく使いましたが、わが社のパーパスを踏まえてどう行動すべきか?という原点に立ち返って考えました。ピューロランドは笑顔を提供するテーマパークなので、お客様と笑顔で会えなくなるようなことはしてはいけない。その一言に尽きます。

―― 小巻さんの顧問就任前、過去に業績低迷したときの経験も生きていますか?

小巻 業績が悪かった時代は、内的要因でお客様に来てもらえませんでした。でも今はお客様に来ていただけるものを用意しているから、コロナという外的要因さえなくなれば挽回できます。どん底から一緒にやってきたレジリエンス(回復力)が高いチームだから、私はこの仲間となら絶対にやっていける自信があります。数字だけを見ると笑ってはいられない状況ですが、コントロールできないことにくよくよしても仕方ないし、今だから挑戦しやすくなったこともあるはず。影ではなく光の部分を見れば「大丈夫」と思えます。いろいろあったから(笑)、うちの組織は強いですよ。

 とはいえ、私もけっこうマメに落ち込むし(笑)、反省もするんです。

―― そういうときはどうするのですか。

<小巻亜矢さんがやめたこと&始めたこと>■2020年にやめたこと/・自分を責めること/■2020年に始めたこと/・不安な気持ちを書き出す/・心の声に耳を傾ける/・筋トレ/■2020年に向き合ったこと/・成長していると思える感覚を大切にする/■2021年に始めたいこと/・思いっきり女性活躍の支援をする