弱者が強者な社会をやめたい

 お金持ちもネットでたたかれる傾向にあるなあと思います。例えばとある社長が、会食でちょっと高級そうなお料理をアップしている投稿に、「日本には貧しい人がいっぱいいるのに、自分だけいいもの食べて……」とか「お金持ちはおいしいものが食べられていいですね」と皮肉のリプライがついていたのを見たことがあります。

 でも、よくよく考えてみてください。「貧しい人が自分とは同じ経験をできないから」という理由で誰もお金を使わなくなったり、発信を控えたら、そのほうが経済にとってダメージですよね。また、所得の多い人たちが支払う税金によって、立場の弱い人で救われている人たちもいる。投稿を見て、あんなディナーを食べたいと思った人が、仕事を頑張って、社会で成果を出すことだってあるだろうし……と考えていったら「日本には貧しい人がいるのだから、その人たちに合わせて行動しろ」というのは物事のほんの一面だけを捉えた、すごく視野の狭い意見だということが浮き彫りになります。

 強さや誇れるものを自分の手で勝ち取った人たちをたたくことが弱者への配慮だとしたら、こんなに居心地の悪い社会はありません。

 つらい人基準の社会は、やがて社会そのものを弱くします。

 強い人をバッシングするのではなく、強い人が弱い人を支えられるように、両者が気持ちよく共生できる社会のかたちを探したいと思っています。そんな形の発信を、これからも、続けられたらと思います。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/稲垣純也、PIXTA