プレッシャーにならない関係性を築く

 「無所属」に加えてもう一つ、私が考える人間関係を楽にするキーワードとして「スポンテニアス(spontaneous)」があります。日本語に訳しにくいのですが、簡単に表現すると「偶然に生まれる」とか「その場その場で」といったような意味合いになるんだと思います。

 例えば時間を決めてバーで待ち合わせるのではなく、「今夜私はこのバーに行くかもしれないから、そこで会えたら会おうね」というような、約束ほどカッチリしたものではない、偶然を楽しむような感じがスポンテニアスな関係性です。

 私は仕事を一緒にできる友達が多いのですが、事前に連絡を取り合っていなくても、偶然現場が一緒になることもよくあります。そんな機会のおかげで、わざわざ会う約束をしなくても自然と関係が継続していくつながりもあります。お互いにプレッシャーにならない人間関係こそ、友情を長続きさせてくれるような気がしますね。

無所属で偶然の出会いを楽しめる人間関係を築きたいです(はあちゅう) (C) PIXTA
無所属で偶然の出会いを楽しめる人間関係を築きたいです(はあちゅう) (C) PIXTA

自分のレベルに合わせて人間関係は変化する

 友情は永遠ではなく、自分のレベルに合わせてその都度、入れ替わっていくものだと思っています。高校や大学時代の大親友も、社会人になって生きるコミュニティーが違ってくれば、どうしても疎遠になってしまうものですよね。

 そういった「切れた人間関係」を修復しようとする人がいますが、無理に続けるとストレスになります。冷たい言い方かもしれませんが、自分が成長したからこそ必要なくなる縁もあるはず。昔の人間関係に固執することなくどんどんメンバーを刷新していったほうが、違和感やストレスから解放されるように思います。もちろん、逆に自分が停滞していると、前は居心地のよかったコミュニティーでもだんだんと、息苦しく感じてしまうように思います。活躍している友達と会える自分でいたいから、私は私の場所で頑張ろう、と思える関係が理想です。

 同時に、友達だけが人間関係だと思わないことも大切です。「友達が多い=コミュ力の高いリア充な人」みたいに思われがちですが、深く分かり合える相手なんて、実際には家族と恋人とか、せいぜい数人いれば十分だと思うんです。頼れる会社の先輩や憧れの上司など、人間関係を豊かにしてくれる人は友達だけじゃないですよね。それに、友達以外にも、自分を癒やしてくれる趣味などがあればそれだって十分です。今の人間関係には満足していますが、私の場合、昔は本が友達だったから、この仕事に就けたと思っています。

 人間関係に行き詰まっている方こそ、友人の有無や数をハンデにせず、プレッシャーにならない関係性をさまざまな場所で確保しておくことを心掛けてみてはいかがでしょうか。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/稲垣純也、PIXTA 取材日:2017年3月8日