「年単位」の積み立てを上手に活用する方法

――年単位の場合、iDeCoを上手に利用する方法はありますか?

 ボーナスが出る方の場合は、12月拠出という手もあります。今後は、そういうケースが増えるのではと考えています。

 また、毎月ではなく、ピンポイントで買えるということになるので、投資中級者向けではありますが、「相場が大きく下がったタイミングで買う」ということもできるでしょう。ただし、毎月自動的に買う形ではなくなるため、「買うのを忘れる」こともありえます。よほど意識していないと、iDeCoの優先順位が低くなってしまうので、しっかり続けていくことがより重要になります。

――iDeCoについて考えるべき順番について、改めて教えていただけますか。

 iDeCoを考えるためのステップをおさらいしてみましょう。

(ステップ1)勤務先の退職金と企業年金があるかを確認する

 勤務先に企業年金や退職金があるかどうかで、自分で準備すべき老後資金が変わります。一度調べておきましょう。

(ステップ2)必要な老後資金を試算する

 現在の生活費から、老後にどれくらい変化があるかを考えてみてください。増える出費(例:医療費や旅行代など)、減る出費(例:家賃、教育費など)を考えて、月にどれくらいの生活費が必要かを計算してみましょう。一般的には現役時代の7割といった目安もあります。

 もらえる公的年金について「ねんきんネット」で調べることができます。さらに、企業年金や退職金などをプラスすれば、老後に必要な生活費との差額で、自分が貯蓄すべき金額の目安が分かります。

「現在の生活費」−「減る出費」+「増える出費」=必要な老後資金 (C) PIXTA
「現在の生活費」−「減る出費」+「増える出費」=必要な老後資金 (C) PIXTA

(ステップ3)生活費の半年分くらいの貯蓄をしっかりためる

 すぐに使える現金として、貯金は最低限「生活費の半年分」必要です。毎月20万円を使っている人なら、20万円×6カ月=120万円をためていきましょう。

(ステップ4)400~500万円の貯蓄をつくる

 いざというときの資金として、400~500万円を貯蓄していきましょう。400~500万円貯まったら、いよいよiDeCoをスタートしてよい時期です。

(ステップ5)できれば上限金額で始めよう

 iDeCoは手数料がかかるため、少ない金額で始めると手数料の割合が大きくなってしまいます。人によって上限金額は異なりますが、できる限り、その上限金額で始めることで、手数料の割合が小さくなります。少し不安があれば、iDeCoを1万円で始めて、あとは預貯金やつみたてNISAなどで増やしていくのも手です。

45歳以上なら、なるべく早く老後資金の準備を

 45歳未満の方は、老後は15年以上先なのでまだ時間があります。ですが、現在45歳以上であれば、少しでも早く老後資金を準備する必要があります。45歳で総貯蓄額が300万円未満という人は、できるだけすぐにiDeCoを始めるのがおすすめです。また、並行して家計を見直していきましょう。

――注意点についても、改めて教えていただけますか?

 金融機関によって金額は異なりますが、「手数料が必ずかかること」「商品によっては元本割れをする可能性があること」の二点です。さらに、原則的に60歳までは積み立てたお金を引き出せないという点も注意してください。

 これらをきちんと理解したうえで、老後資金をつくる一つの手段として活用していただけたらと思います。

聞き手・文/西山美紀 写真/PIXTA イラスト/田中小百合