自己紹介とは自己PRではなく、相手に親切であることだ

「自己紹介の心構えは、相手を信じることです」
「自己紹介の心構えは、相手を信じることです」

 皆さんも就活や転職など、自己紹介が必要な場面が多々あるかと思います。そのときは自分で自分のよいところをアピールするのではなく、ぜひ相手に自分を差し出して、相手にチャームポイントを見つけてもらうようにしてみてください。それはすなわち人に対して心を開くということであり、相手を信じるということでもあります。

 自分をよく見せようとか嫌われないようにと思っていると、なんとなく相手を警戒しながらしゃべることになりませんか。でもそうではなく、不親切になっていないか、負担になっていないかと相手の気持ちを考えながら話すと、それが案外、居心地のいい会話につながっていくんです。なのでまずは「親切」を心掛けて自己紹介をしてみてください。

 例えば「私は協調性のある人間です」は面接でよく聞く自己PRですが、正直、抽象的過ぎてどんな人か分からない。それよりも、もっと具体的で、相手がイメージしやすいような「昨日は近所のおばあちゃんと一緒にかるたをしました」というエピソードを話してみる。すると断然人物像がリアルになり、なにより「この人はどんな人なんだろう?」って質問したくなりますよね。

 加えて、相手の状況も想像してみましょう。採用担当者は日がな一日会議室に詰め、何百人からと同じような答えを聞き続けています。つまり、面接というものに飽き飽きしているんです。だからこそあなたが楽しくおしゃべりできる相手になってあげたら、とても喜ばれると思いませんか。

 そうそう、「面白い=珍しい」ではないので安心してください。「南米をバックパックで一周した」レベルの体験をしないと面白い会話ができないかというとそうではなくて、昨夜テレビを見て感じたことも、行きの電車で考えたことも、あなたしか知らない立派な体験です。だから平凡なことであっても自信を持って話していいし、それが相手に伝わるような親切な表現になっていれば、そこからあなたの人柄もにじみ出るはずです。

 相手は「面接官」という生き物ではありません。でも「面接官」という記号として捉えた途端、会話ではなく報告のようになってしまうんです。

 所詮は人間同士。面接であれ飲み会であれ婚活パーティーであれ、自己紹介は「あなたに会えてうれしいです」という気持ちで相手に親切に接すれば、それだけで特別なものはなにもいらないと思いますよ。

人気者の振る舞いを完コピしたら、あっという間に友達ができた

 ……と、長々講釈を垂れましたが、冒頭でお話しした通り私自身、自己紹介を含めたコミュニケーション全般が本当に苦手でした。

 中学では学級長に立候補した意気込みをとうとうと語った結果、入学早々「ちょっと変な人枠」に入れられてしまい、クラスメートから距離を置かれてしまいました。求められてもいなのに必要以上に自分をアピールし過ぎてしまったんですねえ。

 それからの3年間は記憶がないくらい闇の時代でしたが、高校での再起を誓った私はひそかにクラスで人気者といわれる子たちをじっとりと観察し、研究を重ねたのです。

 すると彼女たちは往々にして飛び切り面白いことを言うわけでもないし、変に目立とうとするわけでもない。ただ相手の話を楽しそうに聞き、自分の意見を言うときにも相手を全否定しないよう、物柔らかに話していました。

 観察を重ねて蓄積したテクニックを高校入学と同時に試してみた結果、驚くほど簡単に友達が増えました。中高一貫校でメンツもさほど変わっていないのに、です。

 それまで「人の前に出なければ生き残れない」という母の教えが強迫観念となり、面白い事を言わなければとペラペラしゃべっていた私でしたが、人気者たちの振る舞いを完コピして少々口をつぐみ、笑顔で相づちを打っていただけで、「ちょっと変わった人」だった3年間の印象はすっかり消えたのでした。