先輩を安心させることが、あなたたちの使命です

「実は新入社員というのは脅威なんですね」
「実は新入社員というのは脅威なんですね」

 ここまで「飲み会に無理して参加する必要なし!」と語ってきましたが、実は一つだけ、新人が飲み会に参加すべき理由があります。それはズバリ………「先輩を安心させるため!」であります。

 意味分かんないですよね。ええとですね、実は世の中には、「後輩に好かれたくて仕方ない先輩」という種族がいるのです。彼らは新人に好かれたいばっかりに、毎朝わざとらしいほど爽やかな挨拶をかましてきたり、「大丈夫か。ちゃんとやってるか」などと面倒見のいいお兄さんお姉さんキャラを日々一生懸命演じています。

 そんな自分が後輩から好かれているかどうか気になって仕方がない彼らにとって、新人のいる飲み会というのはかなり緊張を強いられる場なのです。

 そこで君たち一年生は、まず彼らを安心させてあげるといいでしょう。飲み会では、「大丈夫です、私はあなたのことをとてもいい先輩だと思っており、評価しています」ということをぜひ態度で示してあげてください。

 「新人」という存在を無力に思うかもしれませんが、実は新入りさんは社員全員にとって一番の脅威です。だって、未知の人ですから。知らない人は怖いんですよ、みんな。これから会社を背負って立つあなたたちに嫌われてしまったら、窮地に立たされるのは先輩たちのほうですからね。

 なので、毎朝繰り出される「なんか困ったことがあったら俺に言えよ(サムズアップ)」みたいな歯の浮くようなセリフにへきえきしていたとしても、「先輩のこと、マジで頼りにしてます!」と言っておいてあげましょう。そうすれば彼らは安心して仕事にまい進できますし、そのうち平常運転に戻ってくれます。

 これと同様の理由で、部内のお局からランチに誘われたら、ぜひ付き合ってあげてください。「さすがです!」「知らなかったです!」「すごいです!」「センスいいですね!」「そうなんですね!」の「魔法の相づちさしすせそ」をこれでもかと繰り出し、乗せに乗せて語らせてあげると、彼女が自慢に思っていることやコンプレックスに感じていること、はたまた誰が好きで嫌いかなんてことが見えてくるはず。ぜひいっぱい観察して情報収集しましょう。

 意外かもしれませんが、誘われるよりも誘う側のほうが緊張しているし、なかなか勇気がいるもの。私も年次が上になってから初めて、後輩にどう思われているかでこんなに不安に駆られるものかと驚きました。

 実は新人の皆さんのほうに主導権があるということを覚えておいてほしいし、先輩や上司や取引先の人が何を不安に思っているかを考える習慣を付けてほしいです 。面倒くさいようだけど、そうして 彼らの承認願望を早めに満たしてあげると、不安が攻撃に変わるのを防げますし、案外話しやすかったりもするはずですから。健闘を祈ります!

聞き手・文/小泉なつみ 写真/稲垣純也