「ここで全員、泣く!」、そんな演出いらんのです

「寒い中で、新郎のドラム演奏を聞かされたんですよ」
「寒い中で、新郎のドラム演奏を聞かされたんですよ」

 小雨そぼ降る寒い日、高原のテラスで震えながら新郎のドラム演奏を聞いた日もありました。新郎新婦が互いのご立派なプロフィールをたたえ合うVTRをひたすら見させられた日もありました……って、いろいろ思い出してきちゃった。

 盛り上がっている当人たちは誰も彼も自分たちを祝福してくれるだろうと思うのかもしれませんが、大人であればあるほど複数回の披露宴に出席しているので、割と冷静に見ているもの。極めて私的な場であるが故に本音や本性が出てしまうので、これから式を控えている方、浮かれ過ぎていないかよく考えましょう。

 今あれこれ思い出してあらためて分かったのは、自分たちが楽しむばかりで来てくれた人を楽しませる気持ちのないものだと、「おいおい」とツッコミを入れたくなるんですね。

 結婚式というのは周りの人に結婚を宣言するもの。披露宴はお世話になった皆さんに感謝の気持ちを伝えるための場所。

 そんな場所で新郎新婦から自然とあふれ出る幸せなオーラに人々は感動するのであって、「ここで全員、泣く!」のような見え見えの演出は、ただの下手な出し物です。

 感謝の気持ちということでまた一つ思い出しました。

 お金がないと嘆く知人の披露宴で、私は司会、花屋さんの子は会場のフラワーアレンジメント、デザイナーの子はウエルカムボードみたいな感じで、それぞれができることを手弁当でやって式を盛り上げようと頑張ったことがあったんです。でもその後、新婦からはきちんとしたお礼の言葉がなくて。

 一緒に準備した人たちとも、「お祝いしたかったからまあ、いいんだけど、なんかちょっと残念だね……」みたいな空気になり、結局その後、新婦とは疎遠になってしまいました。

 先ほどのモヤッとしたご祝儀の件もそうですが、「あの人ってちょっとそういうところあるかなあ」とうすうす感じていたことが、「やっぱりそうだったか……」と残念な答え合わせができてしまった、披露宴での振る舞いが決定打になった、みたいなことってあるんです。恐ろしいですね、人生のイベントって。

お土産と同じで、結婚式も「定番」が一番

 以前この連載でも取り上げた、会社へのお土産の話「小島慶子さんに聞く『職場へのお土産』問題」と同じで、やっぱり結婚式もオーソドックスが一番だと思います。思い返してみても、感じのいい式や披露宴って、普通なんです。奇をてらっていない。

 そりゃ、演出なんかなくたって幸せな二人の波長は伝わってくるし、そのほうがお客さんも素直に感動できるんですよね。親への手紙なんかで演出過多で泣かせようとすると、それはおうちでやってほしい……とか思ってしまうことも。

 オーソドックスがいいのは引き出物も同様。お願いだから、カップルの名前なんて刻印しないでくださいね。頂くなら……真っ白な今治タオルなんていいですよね。唐草模様とかポップな刺しゅう入りとか、己のセンスや独自の味付けは全く必要ありません。つまらなければつまらないほど、相手は喜びますから。