【質問4】「自分のダメなところ」を1つ挙げるとすれば?

【回答】とっさに「嫌」と言えないこと

 「いい人に見られたい」という八方美人な気持ちが出て、相手に合わせてしまうことがあります。

 今回の個展は違いますが、イベントによっては本の購入者限定のサイン会もあったりします。その時に、突然くしゃくしゃの紙を出されサインをしてほしいと言われたことがありました。とっさに「いいですよ」と応じてしまい、後で自己嫌悪になったんです。一呼吸置いて、「ごめんなさい」と答えればよかったのですが、とりあえずその場で喜んでもらおうと思ってしまいました。相手に悪気がない言葉や行動で自分が傷つくときが一番困ります。今は一呼吸置くことを練習中です。

【質問5】「自分の好きなところ」を1つ挙げるとすれば?

【回答】他人の意見を素直に受け入れるところ

 私は自分の素直なところが長所だと思っています。セツ・モードセミナーに入学したとき、私は32歳で、同級生はみんな年下でした。一番仲が良かった友達は18歳。みんなアートに詳しいから、面白いアーティストやギャラリーの情報を教えてくれるんです。私は素直に聞いて、おすすめされた本を読んだら「あの本面白かったよ」と伝えていました。教えたものをすぐに試すと、教えた側はうれしい気持ちになってまたアドバイスしてくれるんですよね。いろいろなものを教えてもらって、すごく勉強になりました。

 教えてもらったことを素直に試す姿勢は今も変わりません。例えば、今日の取材は濃いめのネイビーのワンピースを着ようと決めていたのですが、昨日この個展に来た友人のスタイリストに「個展の雰囲気に合わないから、もっと淡い色がいいよ」と言われたんです。その後一緒に買い物に行って、このセーターを選んでくれました。ちょっと悩んだり困ったりしたことは、聞けば誰かが教えてくれるものです。

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 会社員からイラストレーターへの転身と、それを可能にした松尾さんの物事への向き合い方を中心にお話しいただいた前編。後編では、自分をご機嫌に保つ方法や、時間の使い方を伺います。

聞き手・文/飯田 樹 写真/品田裕美

松尾たいこ(まつお・たいこ)

アーティスト・イラストレーター。短大卒業後、地元の自動車会社に11年間勤務し、32歳で上京。イラストレーターに転身。「クライマーズ・ハイ」(横山秀夫著/文春文庫)をはじめ、これまで手掛けた本の表紙イラストは300冊以上。近著に「35歳からわたしが輝くために捨てるもの」(かんき出版)、「クローゼットがはちきれそうなのに着る服がない!」(扶桑社)がある。現在、東京・軽井沢・福井の三拠点生活中。公式ブログ「軽やかHAPPY LIFE!旅するように暮らす私とファッションと