【質問3】人生を変えた出会いは?

【回答】ゼミの先生、女性パイロットの先輩、航空局の試験官……いろいろな人に影響を受けました

 いろいろな人がいい言葉やきっかけをくれて、道をつくってくれました。最初に影響を受けたのは、大学のゼミの先生。女性の先生で、「パイロットを目指したい」と伝えたら「エレガントな女性になりなさい」と言われました。「男の世界だから男っぽくしなければ」と思う必要はなく、女性としてのよい部分は持ちながらも仕事ができる人になってほしいというメッセージでした。例えば、立ち居振る舞いや見た目については、女性らしさを無理に消すことなどしなくても仕事はできます。後輩に対しても見本になることを意識しています。

 次に印象的だったのが、アメリカで飛行機のライセンスを取得した後、日本で働きながら訓練費をためている期間に出会った女性パイロットの先輩です。私は日本には女性パイロットの仕事がないと思っていたのですが、「日本でも仕事がないことはないわよ」とさらりと言われました。彼女は私より少し上の世代だったため、エアラインで働く道はありませんでしたが、ヘリコプターのパイロットをしていた方で、とても尊敬できる先輩でした。いろいろなことを模索し、その仕事にたどり着いたのだと思います。その言葉を聞いて、日本でもパイロットの仕事を探せるかもしれないと希望を持ちました。

先輩女性パイロットの言葉を受け、藤さんは日本でのパイロットの道を探し始めました
先輩女性パイロットの言葉を受け、藤さんは日本でのパイロットの道を探し始めました

 事業用操縦士の試験を受けた時には、航空局の試験官の方に、「エアラインとかの副操縦士に向いているね」と褒められたことが自信になりました。当時は、自社養成ではなく、自分でライセンスを取った人間がエアラインに入れる道はありませんでした。しかし、いろいろな方を見てきた試験官がそう言うのなら、自分は能力的にはエアラインに行けるのだと思ったのです。それまでは漠然とパイロットの仕事を探していましたが、この言葉がエアラインを受けるきっかけになりました。

 その後、副操縦士になるための社内審査を受けた時には、査察乗務員のキャプテンに「機長になるつもりはあるのか」と言われました。もちろん「あります」と答えたのですが、後から聞くと、当時、彼は私が結婚して出産して辞めてしまうことを懸念していたそうです。私の意志として認めてくれたことをうれしく思いました。そして、その人との約束を守ろうとする気持ちを持ち続け、私がキャプテンになった時にはすぐに電話をしました。すごく喜んでくださいましたね。

 今まではいい言葉をもらった話ですが、逆のケースもあります。事業用操縦士の免許取得の訓練中に、ある使用事業会社のパイロットに「身長が低いし、女性だし、視力もそこまでいいわけではない。三重苦だからパイロットになれるわけがない」と言われたのです。悔しかったので、「この人より高い高度を飛んでやる!」と、自分のモチベーションにつなげました。