【質問5】価値観を変えたプライベートの転機はありましたか?

【回答】出産をして使える時間に限りができたことです

 今、1歳半の子どもを育てています。振り返ると、出産までの自分は、一生の仕事にしたいという思いから、花の仕事に全力投球していました。休みの日もいろいろな花屋さんを見に行ったり、お花の産地さんを見学に行ったりと、時間があれば全部花のことに費やしたいと思っていました。

 でも、出産をしたことで、使える時間に限りがあることを知ったんです。夕方の時間には子どもにご飯を作って、お風呂に入れて、寝かし付けをしなければなりません。それが、私にとってはとてもいいことでした。

「使える時間に限りがあると知ったことがいいことでした」と前田さん
「使える時間に限りがあると知ったことがいいことでした」と前田さん

 出産するまでは「誰にも負けないかっこいいものを作りたい!」「一番になりたい!」「市場に一番早く到着して、一番かわいい花を手にしたい!」といつも思っていました。でも、出産してから保育園に入るまでの間は、親に子どもを預けてから市場に行かなければならず、市場に一番乗りすることができない状態に。そうしたら、遅い時間に出合った花が輝いて見えたんです。それまでは「好きじゃない」と決め付けていた花も、「こういうふうに飾り付ければかわいいな」と気付くなど、仕事に対して、いろいろな角度から見られるようになりました。時間に限りができたからこそ、出合えた新しい発見だと思います。

 今は自分で会社を経営しているので、会計のことや仕入れのことなど、やるべきことはすごくたくさんあります。いくらでも仕事に時間を割けるし、割きたい気持ちもありますが、全部をやっていたら、家族との時間や暮らしの時間がなくなってしまいます。そうならないように、夕方から子どもが寝るまでは子どもと過ごす時間と決めているんです。その間は「メールの返事もしない」など、メリハリをつけるようにしていますね。とはいえ、返事をしなければならないときもあるし、せわしなくなってしまうこともあるので、「まさに奮闘中!」という感じです。

聞き手・文/飯田樹 写真/稲垣純也 撮影協力/GARDEN HOUSE Kamakura

前田有紀(まえだ・ゆき)

10年間テレビ局に勤務した後、2013年イギリスに留学。コッツウォルズ・グロセスター州の古城で、見習いガーデナーとして働いた後、都内のフラワーショップで2年半の修業を積む。「人の暮らしの中で、花と緑をもっと身近にしたい」という思いから、SUDELEYを立ち上げ、イベントやウエディングなどの装花・制作をはじめ、さまざまな空間での花のあり方を提案する。Website「Small space gardening