【質問9】毎日の生活で充足感を感じるのはどんな時ですか?

【回答】鎌倉の自然や季節感を感じる時です

 自然がある場所で暮らしと子育てをしたくて、鎌倉に引っ越しました。夫婦でどういうふうに生きていきたいかを話し合った時に、「都会なら通勤も便利で、いろいろな選択肢や教育のチャンスはあるけれど、自然がないよね」という話になりました。子どもに対して「何でもかんでも買ってあげられたわけじゃないけど、自然のある環境だけは与えてあげられた」となるのが自分たちらしいという結論になり、鎌倉を選んだのです。

 今は、鎌倉で過ごす家族の時間が大事なインプットになっています。鎌倉は街も、お寺も、山歩きをしても、自然が当たり前のように美しいんですよ。草花の美しさや季節感が、自分にとって大事なインスピレーションの源になっています。バッタやカタツムリなど、自分が子どもの頃には身近だったけれど都会から消えてしまったものがたくさんあるんです。この間も、買い物帰りにツバメの巣を見つけて、子どもと二人で眺めていました。

「鎌倉は自然が当たり前のように美しいんです」(前田さん)
「鎌倉は自然が当たり前のように美しいんです」(前田さん)

【質問10】将来のことについてはどんな時に考えますか?

【回答】車での移動中です

 将来のことはいつも考えていますが、特にまとまった時間ができるのは車での移動中です。打ち合わせや装飾で都内に行くので、運転する時間が長くて。そこで思い付いたことは、後から企画書にしています。思い付いたコンセプトや実現したいことを、手書きで企画書に落とし込むのです。

 花業界全体を見ていて、自分のために日常的に花を買って帰る人は同世代でまだまだ少数派だと感じています。でも、花業界じゃない人には「もっと飾りたいけれど飾り方が分からない」と言っている人が多くて、売りたい人と買いたい人が擦れ違っていると感じました。花屋にいて「お客さん来ないな」って待っているだけではダメ。花をいろいろな世界に持っていって、触れてもらって、「花っていいな」を体験してほしいと思っています。社会にインパクトを与えられるようなきっかけづくりをしたいんです。

 最近では、仲間たちとファミリーフォトのブランドを立ち上げました。プロのカメラマンさんとメークさんに来てもらって、花を飾った空間で家族写真を撮影するものです。家族写真というとかしこまってしまいますが、花を前にするとみんな自然な笑顔になります。秋には移動花屋を専門とする花のブランドも立ち上げる予定です。

聞き手・文/飯田樹 写真/稲垣純也 撮影協力/GARDEN HOUSE Kamakura

前田有紀(まえだ・ゆき)

10年間テレビ局に勤務した後、2013年イギリスに留学。コッツウォルズ・グロセスター州の古城で、見習いガーデナーとして働いた後、都内のフラワーショップで2年半の修業を積む。「人の暮らしの中で、花と緑をもっと身近にしたい」という思いから、SUDELEYを立ち上げ、イベントやウエディングなどの装花・制作をはじめ、さまざまな空間での花のあり方を提案する。Website「Small space gardening