【質問4】お仕事の愛用品を教えてください

【回答】絵の入った名刺です

 退職して、絵の入った名刺を作りました。この名刺は日本フィランソロピー協会による「フィランソロピー名刺」というものです。ハンディキャップのある作家さんの作品で、名刺を作ることでご本人にも収益が入るようになっており、印刷も福祉作業施設で行っています。名前だけの名刺になるのは寂しいなと思っていた時に、「名刺を作ることで社会貢献できるよ」と紹介され、この名刺に出合いました。

退官後、最初に作った名刺を見せてもらいました
退官後、最初に作った名刺を見せてもらいました

 それから、携帯電話がなかった頃は娘二人の写真をカードケースに入れて持ち歩き、お守りにしていましたね。今は携帯の中に孫の写真が入っています。

【質問5】自分のモチベーションを上げる方法は?

【回答】おいしいものを食べる、好きな本を読む

 「毎晩、今日よかったことや幸せだったことを三つ数える」ということを、若い部下に教えてもらったんです。自分でやってみたら、「おいしいごはんを食べた」と「温かい布団で寝られる」で、二つ確保できることに気付きました。もう一つあれば三つになるので、これは結構いい習慣だなと思っています。

 やっぱりおいしいものを食べることと、好きな本を読むことが自分へのご褒美ですね。今は通勤時間がなくなったので、読書場所はトイレとお風呂。トイレではコミックを、お風呂では本を読んでいます。講演などで出張をするときも、行きの電車では真面目に講演の準備をするのですが、帰りはご褒美の時間として本を読むことにしているんです。ご褒美があると幸せですね。

 「今日一日を頑張るだけでいい」と思うと、苦しみが続くような気持ちが楽になったという村木さん。何かうまくいかないことがあったときに、思い出したいお話です。後編では、仕事で心掛けていることを伺います。

聞き手・文/飯田樹 写真/小野さやか

村木厚子(むらき・あつこ)

1955年高知県生まれ。高知大学卒業後、78年、労働省(現・厚生労働省)入省。女性や障害者政策などを担当。2009年、郵便不正事件で逮捕。10年、無罪が確定し、復職。13年、厚生労働事務次官。15年、退官。困難を抱える若い女性を支える「若草プロジェクト」呼びかけ人。累犯障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」顧問。伊藤忠商事社外取締役。津田塾大学客員教授。著書に、「あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ」(日経BP社)、「私は負けない 『郵便不正事件』はこうして作られた」(中央公論新社)、「日本型組織の病を考える」(角川新書)がある。